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サメ軟骨 はガンの代替医療で用いられてきた

「がんに効く」と大騒ぎされて、世界中で研究が進められてきた サメ軟骨 です。アメリカ、日本
ヨ一口ッパ諸国で争うように、がんの代替医療で用いられてきました。

血管新生を妨げる効果は本当か?

サメ軟骨

サメ軟骨

サメ軟骨 とは、中華料理の高級食材フカヒレのことです。コラーゲンを中心とするタンパク質が40 % コンドロイチン硫酸が 10 % カルシウム も多く含まれます。

  • サメはがんにかからない
  • サメ軟骨の成分コンドロイチン硫酸が、がんの進行を速める血管新生を抑える
  • 免疫力を高め、がんをやっつける

などと喧伝されています。サメ軟骨 は、わが国のがん患者にも頻繁に利用される人気サプリです。

 

古代から生き延び、凶暴で素早いというサメの強さにあやかりたい、がん患者の気持ちは理解できる。だが、実はサメもがんにかかる。腎臓がんやリンパ腫瘍など、いくつものがんがサメに発見されている。そして、コンドロイチン硫酸に関節炎の症状をやわらげる効果はありますが、血管新生を抑えるはたらきはありません。

よくぞ「サメはがんにかからない」などと世迷い言をいったものです。正常細胞の増殖は、アクセルとブレーキに相当する遺伝子によって巧みにコントロールされていますが、アクセルとブレーキに突然変異が発生したとき、細胞のコントロールが利かなくなり、増殖が止まらなくなります。

これがまさにがん細胞です。がんの源は、正常細胞の増殖のしくみそのものにあるのですから、がんの発生しない生物など、この世に存在しないのです。

がんに効くのでは、との期待から、サメ軟骨の研究は 1980 年ころから進められていました。それは、サメには軟骨しかなく、軟骨には血管がないことから、軟骨には血管をつくらせない特別の物質が存在するはずと推測されたからです。

血管をつくらせないことがなぜ、そんなに大事かというと、がん細胞の増殖に欠かせない酸素と栄養素を供給するのが血管だからだ。がん細胞にとって血管新生いのちづなは命綱なのです。

サメ軟骨

主成分
コンドロイチン硫酸
効能
関節炎の症状を和らげる
副作用
あり
注意
抗ガン効果については未確認 患者さんご本人の効果は多く寄せられていますがエビデンスが未確認

そこで、こんな考えが成り立ちます。サメ軟骨 には血管新生を妨げる物質が存在するはずだから、サメ軟骨 を粉末か液体にして食べたり飲んだりすれば、おそらくがん細胞の増殖に欠かせない血管ができなくなる。そうなれば、兵糧攻めにあったがん細胞は死滅するしかない。こう期待されました。

しかも、細胞レベルの実験ではあるが、サメ軟骨の抽出物によってがん細胞の増殖が抑制されるという、いくつもの論文が報告されていました。

信用できない「奇跡のがん治療」

サメ軟骨が一般人に知られるようになったのは、『60 ミニッツ』という米国の人気 TV 番組が、19 93 年 2 月に、キューバにおけるウィリアム・レイン博士のがん治療について放送したことからです。

番組の内容は、29人の末期がん患者がサメ軟骨を 16 週間摂取したところ、その90 % が、がんから奇跡的に回復したというもの。番組が好評だつたので、同年 7 月にも再放送されましたた。

巷には、 サメ軟骨 ががんに効くという噂が瞬く間に広まった。噂が定説化し、サメ軟骨ブームが世界中で起こったのです。

サメ軟骨 の原料フカヒレを求めて、業者がアメリカはもちろん、イギリス、ドイツなどから、サメの産地として有名なコスタリカに押し寄せました。

1004 年には、コスタリカの海岸沿いにフカヒレが山積されるようになり、月間 1500 kg だったフカヒレの生産量が 8 倍の 1  万 2000 kg に跳ね上がりました。コスタリカの沿岸からサメが急激に減少したため、絶滅を恐れた環境保護団体が騒ぎ出すほどでした。

『60 ミニッツ』を観た多くの人がサメ軟骨でがんが治ると信じたのですが、医師たちの反応は

  • 科学的根拠がない
  • 信用できない

と、冷ややかでした。米国立がん研究所 ( NCI ) の広報担当者は、「サメ軟骨の効果は茶番です。お金を無駄にしないで!」と忠告しました。

キューバにおけるレイン博士のがん治療は、その後、患者たちにがんが再発したことが明らかになるのですが、このマイナスの事実は広まりませんでした。

1993 年の二度にわたる TV 放送はまさに「茶番」であり、日本でいうなら「やらせ」です。そのうえ、肝心のキューバでのがん治療は、今になっても公正中立なレフェリーの存在する医学雑誌には一度も掲載されないままです。信用できないというより、インチキです。後に米国立がん研究所は、キューバにおけるレイン博士のがん治療を「未完結。すばらしくない」と結論し、失格の烙印を押しました。

リスクが利益を上回った

それでも、がんの代替医療に サメ軟骨 があまりに多く利用されている事実を踏まえて、メイヨ・クリニックのチャールズ・ロプリンジ博士のグループが治験を行いました。ところが、 サメ軟骨 に抗がん作用はないという結論が得られました。

結果は 2005 年に「がん研究」誌に発表されまし。まず、標準的な抗がん剤治療を受けている、進行した乳がんと大腸がん患者 83 人を 2 グループに分けました。 1 つのグループは抗がん剤治療を受けながら サメ軟骨 を 1 日に 3 〜 4 回摂取、もう 1 つのグループは抗がん剤治療を受けながら偽薬を同じ量だけ摂取しました。

結果は、サメ軟骨を摂ったグループは、偽薬のグループにくらべて 1 ヶ月後に多くのドロップアウトが出たことから、 サメ軟骨 の副作用が明らかとなりました。治験終了者については、期待されたような延命効果も生活の質の向上もまったく見られませんでした。要するに、抗がん効果が期待された サメ軟骨 は、リスクが利益を上回ることが判明しました。

大規模なフェーズⅢ試験の結果

論文でも発表されているように、 サメ軟骨 を培養中のがん細胞に直接与えると、がん細胞の増殖はクある程度抑えられます。ところが、 サメ軟骨 を経口で摂取しても、がんはまったく抑えることはできません。なぜか?

サメ軟骨 の成分がヒトの腸管からは吸収されず、血液中に入ることができないからだと推測できます。そこで、カナダのエテルナ・ゼンタリス社は、 サメ軟骨 から抗血管新生物質を含む有効成分を取り出し、これを「ネオバスタット(A E-1941 )」と名づけ、抗がん剤の候補としました。

ネオバスタット の効果やいかに? 健康な志願者を対象にしたフェーズⅠ の治験では、毒性は認められませんでしたた。次に、効果の判定と毒性試験を兼ねて、進行性の腎臓がん患者を対象に予備的な治験を行いました。

この少数の患者で効果を調べるフェーズⅡのレベルでも、効果はまずまずだでした。しかし、効果を証明するには、多数の患者によるフェーズⅢ の治験が欠かせません。この大規模な治験は、米国立がん研究所がスポンサーとなり、2000 〜 2006 年までの 7 年間にわたり全米とカナダの 53 カ所で進行性の肺がん患者 384 人を対象に行われました。

治験全体を統括したテキサス大学のチャールズ・ルー教授が、2007 年 6 月 2 日「臨床がん学会」で結果を発表しました。

患者は抗がん剤と放射線治療を受けながら、ネオバスタットまたは偽薬を液体で摂取しました。患者は毎日、標準治療を受けた後に、 1 回 10 ml を 1 日に 2 回飲みました。ネオバスタツトグループの平均余命は 14.4 ヶ月でした。これは、 14.4 ヶ月経過した時点で患者の半数が死亡したことを意味します。

そして、偽薬グループの平均は 15.6 ヶ月でした。サメ軟骨の有効成分でつくられたネオバスタットを摂取したがん患者は、偽薬グループよりも早死にしたのです。この大規模な治験のスポンサーは米国立がん研究所である。薬を製造・販売することで利益を得る製薬企業ではなく、資金の源が税金(国立) であることを考えると、この治験結果の信頼性は高いものです。

ルー教授は、「治験結果から明らかなように、ネオバスタットは肺がんには効果がない。利益を追求するために販売されている サメ軟骨 には、業者が主張する『がんと闘うサプリ』としての効能を支持する科学的なデータは存在しない。患者の延命やがんの縮小において、サメ軟骨には臨床的なメリットはまったくない」業者側が、それでもなおサメ軟骨には抗がん効果があると主張するのは勝手ですが、がん患者は冷静な目で客観的に判断するべきでしょう。

もしもがん患者から サメ軟骨 の抗がん効果について尋ねられたら、この大規模なフェーズⅢ 試験を引用し、サメ軟骨由来のサプリについて、この時点での研究では「効果なし」という結論が得られています。

サメの軟骨 | ガン患者に評判の健康食品