どんな手術でも、体にメスを入れるということは、なんらかのダメージがを受けます。また、合併症が皆無ということはありません。胃がんに対する開腹手術後には、次のような合併症の可能性があります。
- 腸管麻痺
- 麻酔や開腹そのものの影響によって腸管の動きが鈍り、腸の内容物を送り出すことができないため、腸液がたまる状態で、ほぼ全症例に見られる。やがて腸管の動きまひが回復してきて術後48~72時間でおならが出れば、麻痺は取れたと見なされる。ごくまれに、腹膜炎や腸閉塞、脊髄神経の損傷を起こすと麻痺が起こることがあるので、その見極めのためにも、おならが出ることは重要。
- 腸管癒着症
- 腹腔や胃、腸管の周囲をおおってい.る腹膜および大綱などは、傷ついた部分や炎症を起こした部分を防御し治そうとする「カバーリングシステム」が働く。このため小などがベタッとくっついて、傷や炎症を食い止めようとする。これを癒着といいます。このシステムがうまく働けばいいのですが、時にまた、癒着した腸が起点となってねじれると、「腸閉塞」を起こして、腹部膨満感、腹痛、嘔吐などの症状が起こります。
- 縫合不全
- 腹部の切除面を縫い合わせたあと、体からはフィプリンという分泌物が出て、傷どうしをつなぎ合わせようとする。ところが、この自然治癒力が弱い場合、縫合部が外れてしまい、消化液などが腹部内へ漏れ出て炎症(「腹膜炎」)を起こすことがある。これらの合併症は時には致命的になることもあるが、大半は抗生物質や高カロリー輸液で再手術などせずに治癒させることができます。また、縫合不全を起こすと、洩れた消化液が腹部の皮膚にこぼれ出ることがある。すると、皮膚が消化されてただれてしまうこともあります。縫合不全は以前は大変多い合併症だったが、近年縫合する場合に性能のよい機械が用いられるようになったため、縫合不全の確率はで1パーセント程度まで減少している。
- 縫合部狭窄
- ビルロートⅠ法では胃と十二指腸の吻合部、ビルロートⅡ法では胃と空腸の吻合部が狭くなり、食物の通過が悪くなり、嘔吐することがあります。この部分のむくみのために起こるものは数週間で治癒します。内視鏡で拡張することもあり、時には再手術を余儀なくされることもあります。
- 術後膵炎
- リンパ節郭清にともなう膵臓の損傷、あるいは膵切除を併せておこなった際の合併症。急性膵炎を引き起こす可能性があり、症状が重くなると膵壊死を起こすこともある。
- 無石胆のう炎
- リンパ節郭清にともなう膵臓の損傷、あるいは膵切除を併せておこなった際の合併症。急性膵炎を引き起こす可能性があり、症状が重くなると膵壊死を起こすこともある。