胃がん

胃全摘の手術後の生活の変化について

胃がんの治療ですから食生活が中心に変化します。

毎年10万人以上の人が、胃の一部または全部を切除しているといわれています。胃の切除術が普及してから100万人以人が「胃なし」で生活していることになります。
しかし、多くの方は術後1、2年後には、以前と同じように元気に生活しておられます。切除したばかりの頃は不自由さを感じることもありますが、しだいに休も心も、胃のない生活に慣れていきます。

しかし、胃という臓器が持っていた役割を失うことで、日常生活に次のような変化があらわれます。

食生活

  1. 食べ物の消化・吸収機能が低下します胃液の分泌が低下し、食べ物を撹拝する機能が弱まったり、なくなったりするからです。胃切除後の食事のポイントはのひとつめはゆっくりよく岨疇しながら食事をすること。そしてふたつめができるだけ食べ物を細かく刻むこと。唾液でドロドロのおかゆ状になったものや小さなかたまりなら、人工的につくった食べ物の通り道の途中で膵臓から分泌される消化酵素がよく働きやすくなります。しかし、一部の栄養摂取に影響が出ます。とくに、カルシウム、鉄分、ビタミンB12を吸収しにくくなります。虫歯や骨粗鬆症、貧血などには気をつけるようにします。
  2. 食べ物を貯留する機能が消失します。胃は十二指腸の動きに合わせて、ぜん動運動を起こしながら食べ物を少しずつ送り出します。が、胃切除後は、そ.のまま食べ物が十二指腸や小腸へ流れてしまいます。早食いをしたり大量に食べたりすると、十二指腸や小腸でつまって口から吐き出してしまうことがある(小胃症状)ため、できるだけゆっくり時間をかけて口の中でよく咀嚼する。口を胃袋の代わりと思うこと。次に1回分の食事量を少なくすることが大切です。よく病院の栄養指導では、「手術後3ヶ月までは6回食、その後は3回食に」といわれますが、3回食では栄養不足になりがちなため、間食を上手に利用して栄養を補うように心がけます。

胃液分泌の低下

胃液には大変濃度の高い胃酸(塩酸)が含まれていて、食べ物を殺菌する働きを持っています。が、胃切除後には胃液が分泌されないため、細菌性の食中毒や感染症(赤痢やコレラなど) にかかりやすくなります。生もの、不衛生な食べ物、海外旅行せきりでの生水は避けたほうがよいでしょう。

おなら

食べ物や飲み物とともに空気を飲みこむと、胃の上部にたまって、げっぷとして吐き出されます。が、胃を切除してしまうと、空気をためるスペースがなくなり腸へ送り出されるため、おならとして外へ出されます。胃切除後は、おならの頻度が多いと悩まれる方が多くみられますが、がまんすると腸がパンパンに腫れてしまい腸閉塞を引き起こすため、気にしないで出してしまいましょう。おなら対策には、

  1. あわてず、ゆっくり食べると空気を飲み込みにくい。
  2. 大きな口を開けてすすりこんだりせず、なるべく口を閉じて食べる。
  3. 腸内にガスのたまりやすい飲み物(炭酸飲料、ビール)は避ける。

などが有効です。

お酒とたばこ

胃を切除したからといって、飲酒や喫煙を止める必要はありません。しかし、アルコールに関してはいくつかの影響が出ます。

  1. 吸収度が早くなるため酔いやすくなります。
  2. 大量の飲酒は胃炎を招きます。
  3. おならの対策として、ビールは避けた方がよいでしょう。

胃の切除後に食べてはいけないもの

手術後半年間は、部分切除した場合でも全摘の場合でも、食べ物の種類には気をつける必要があります。

手術直後、部分切除では平均1週間前後から、全摘では10日前後からおかゆを食べることができるようになります。その後、普通食を食べ始めるときには、消化・吸収しやすい炭水化物から摂りはじめます。たんばく質や脂肪は新しい機能になじむまでに3ヶ月以上かかります。が、消化・吸収能力には個人差があるため、ご自分の体で試して下さい。食後に下痢症状が起こるかどうかを目安として、少しずついろいろな食べ物を増やしていくとよいでしょう。

熱いもの、冷たいものは、腸を刺激するため避けるようにしてください。食べ物は口の中や胃の中で温度調節をします。が、胃を切除すると幽門括約筋がなくなるため、冷たいものがそのまま腸に流れてぜん動運動が高まり、下痢を起こします。

甘いものは血糖値を高くするため、早期ダンピング症状を引き起こします。とくにジュースやようかん、まんじゅうは高濃度な食品なため、血管や粘膜が過剰に反応してショック症状を招きやすくなります。
また、消化の悪いもの、術後再建した消化管での通過が悪いものを上に一覧表にしてみました。これらのものを食べて腸管でつまらせてしまうと、内視鏡を腹部に入れて取り除くことになります。

新しい栄養摂取について

10年前ぐらいから新しく取り入れられた、栄養摂取方法です。正式な名称は「経皮的内視鏡的胃ろう造設による経管経腸栄養法」といわれ、口から食事がとれなかったり、ものを飲み込むことができない人のために、胃に直接栄廣を入れるための入り口を、内視鏡を使って作ります。チューブがおなかの外に出るタイプと皮下に埋め込む超小型のタンクに針を刺すタイプがあります。
どちらも、液体の栄養剤をそこから注入するのですが、シャワーや入浴をおこなうこともできます。ロから食事ができるようになれば、通常の生活に戻ることができます。

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