がん検診を受けると、よく「胃にポリープができています」と言われることがあります。このポリープといケ言葉は病変部の形状を示すもので、胃や腸などの粘膜が、表面から盛り上がった形を指します。きのこのように頭が袋状で茎のある形や、隆起しただけで茎がなくひらべったい形などがあります。
このポリープが、がんなのかどうか、つまり悪性か良性かは、その表面の組織をとって検査をしてみなければ診断できません(生検という)。病理医が顕微鏡で観察るため、「病理学検査」と呼びます。
検査では、まずポリープが「腫瘍性か、非腫瘍性か」に分けられます。
腫瘍性のポリープには、粘膜下腫瘍、腺腫、腺がん、の3種類があります。粘膜下腫瘍と腺腫は良性腫癌ですが、腺がんは悪性腫瘍です。
粘膜下腫瘍というのは、文字通りに粘膜の平滑筋や横紋筋などにできた筋腫、脂肪組織にできた脂肪腫、神経組織にできた神経腫です(今後、これらの粘膜下腫瘍の呼び方が変わる可能性があります)。
良性腫瘍は自覚症状があまり出ないため、内視鏡検査で発見されるまでわからなかったということが多くあります。が、なかには茎の長いポリープができたためにその一部が十二指腸に飛び出してひっぱられ、なんとも表現しにくい鈍痛を起こしていた、というケースもありました。
良性腫瘍のなかでも、腺腫性のポリープは月日が経過していくうちに悪性腫瘍(がん)に変化していくことがあります。胃内視鏡検査で胃の出口(幽門部) に表面が赤色のポリープが見つかれば腺腫性ポリープということが多く、その場合は切除します。しかし、大腸の腺腫性ポリープと異なり、胃ではがんに変化する可能性は低いとされています。また粘膜下腫瘍の1%くらいは、悪性腫癌に変化することがあります。
とくに、大きさが1年以内で少しずつ変わっていくものは注意が必要です。粘膜下腫瘍の大きさが3cm以下であれば良性腫瘍のままですが、5cm以上になると悪性腫癌に変化している可能性が高くなります。
たとえば、リンパ組織に発生した良性のリンパ腫が悪性リンパ腫に、平滑筋に発生した筋腫が平滑筋肉腫に変わるというようなぐあいです。なお、これらの悪性腫瘍への変化をあらかじめ予防する手立ては、現時点では見つかっていません。
腺がんは悪性腫瘍、つまり胃がんです。良性腫瘍との違いは、胃壁の粘膜を突き破って成長すること、また、血管と同じように全身に分布しているリンパ管を通って、がん細胞を体の中に増殖させていくことです。
胃と隣接する臓器の組織を壊しながら、がん細胞が成長することを「浸潤」、離れた臓器で増殖が始まることを「転移」と呼びます。たとえば、胃にがんができて、隣接する膵臓や横行結腸、肝臓を突き破るほど、がんが大きくなって浸入した場合は「直接浸潤」、血管やリンパ管を伝わって、離れた臓器すなわち肝臓、肺、脳、骨などにがんが到達してそこで増殖した場合は「転移」といいます。かけいせいせいかせいせい非腫瘍性ポリープには、炎症性ポリープ、過形成性ポリープ、化成性ポリープの3種類があります。炎症性ポリープは、粘膜にリンパ球が入り込んできて炎症を起こし、かたまりをつくったものです。
過形成性ポリープは粘膜が厚くなり突き出したもの、化成性ポリープは、原因は明らかになっていませんが粘膜が厚くなったものです。これらは、放っておいても腫瘍性ポリープやがんに変化することはありません。胃の場合、ポリープができても腫瘍性のものは全体の1割以下で、ほとんどは非腫瘍性の炎症性ポリープや化成性ポリープです。
以前は、ポリープが見つかれば切除していましたが、最近では非腫瘍性のものはがん化しないことがわかっているため、ほとんど切ることはありません。また、消化管は口からお尻まで同じ粘膜でできているため、いくつかの臓器で同時にポリープができることもあります。もし、ポリープが見つかった場合は、念のためほかの消化管の臓器も詳しく調べたほうがよいでしょう。