早期がんのうち、粘膜がん(mがん)の治療法
がんができた場所にも影響しますが、2cmまでの大きさであれば、おもに内視鏡的切除術を選びます。がんの形態に合わせて、2種類の方法があります。
たとえば、がんがきのこの形のように隆起している場合は「内視鏡的ポリペクトミー」という方法で切除します。
がんが平べったい形の場合は、その底部に生理食塩水を注入して、さらに隆起させてから「内視鏡的粘膜切除術(EMR)」という方法を行います
内視鏡的治療は、口から器具を入れて、テレビモニターを見ながら切除するためおなかに手術創が残りません。内視鏡を入れのどに局所麻酔をしますが、手術中の痛みはありません。このように、開腹手術と比べると簡便な方法で、手術時間も10~15分程度です。
術後1週間目にふたたび内視鏡を入れて、潰瘍(この場合は内視鏡で切除した粘膜の傷)が療病化しているか確認します。癖痕化していれば、早ければ術後10日目から社会復帰できる場合もあります。
また、潰瘍が大きかったり、出血量が多かったりした場合は、入院期間が少し延びます。また内視鏡的治療といえども、胃壁は入り口(噴門部) は3mm、出口(幽門部) は5mmという厚さです。手術の偶発症として胃壁に穴が開いてしまったり(穿孔という)、出血してしまったりすることもあり、緊急手術の準備もします。
このため、病院によっては日帰り手術はおこなわず、原則的に1泊の入院の場合もあります。手術後には、切除した病巣を病理学検査に回します。顕微鏡を用いて詳しく検査した結果、がんの深達度が手術前の診断どおりに「粘膜までのがん」で、切除した断面(切除断端) にもがん細胞がなければ、全部取り除くことができたということになり、これで治療は終了です。
内視鏡による切除でも、すべて取り切れない可能性もあります。その場合は、あらためて手術が必要になります。腹腔鏡下切除か、開腹手術になります。なお粘膜がんでも、がんが発生した場所、大きさ、形、組織型によっては内視鏡ではなく「腹腔鏡下手術」あるいは「開腹切除」の適応になる場合があります。