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乳がん検診の重要さ

生存率は検診で乳がんが見つかった人のほうが高い

現代は、2人に1人が何らかのがんになってもおかしくない時代ですから、がん検診を受けることが必要なのは、みんなわかっていると思います。それなのに、日本では女性の検診受診率がとても低いのが現実です。欧米人女性の検診受診率が70~80パーセントなのと比べて、日本人女性の場合は40パーセント程度しかなく、極端に低いのがわかります。

乳がんが原因で亡くなる人の死亡率は、近年では世界中で減少しているといいます。しかし、日本では例外で、増加の一歩をたどっています。乳がんの治療法はめざましく進歩していますが、乳がんによる死亡者数は減ってはいません。これは乳がんになる人がすごい勢いで増え続けていることもあるのですが、受診率の低さが死亡者数増加の1つの原因であることは間違いないのです。

検診をおこなって乳がんが発見された場合と、しこりなどの自覚症状から発見された場合では、検診で発見された人のほうが生存率が高いというデータがあります。このことは、それだけ早期に治療を始めることができたからだとも考えられ、定期的に乳がん検診を受けることはとても重要なことだと言えます。

ただし、マンモグラフィなどの画像検査は優れた検査法ではありますが、残念ながら完璧というわけではありません。実際に、検診で『異常なし』と診断された人でも、1年以内に自分で乳がんを見つけているという報告もありますから、「検診さえ受けていれば安心!」と考えずに、あわせて定期的な自己検診をおこないましょう。

セルフチェックを習慣にする

胃や大腸のような臓器は自分の手で触ることができませんが、乳がんでは、乳房を手で触って確かめることができます。体の内部にでき症状が出ないと発見されにくい他のがんに対して、乳がんは自分で見つけることができるがんです。そこで、医療機関で検診を定期的に受けるだけでなく、自己検診の習慣をつけることが大切になります。
毎月1回のセルフチェックで、いつもと違う乳房に気づくことができます。セルフチェックは、生理が終わった4~5日後くらいが適しています。閉経後の場合は、毎月、日を決めておこなうとよいでしょう。

「自分には関係ない」ではなく、「自分も乳がんになるかもしれない」という気持ちが早期発見につながるのです。
たとえ乳がんになっても、早期のうちに発見し適切な治療を受けて、乳がんを克服しましょう。そのためにも、自己検診の習慣をつけましょう。

日本人の乳がん

乳がんになるのが最も多いのは閉経前後

以前は、日本人女性が欧米人女性と比べて乳がんになる人が非常に少なく遺伝的に乳がんになりにくい人種だと考えられていましたが、日本人もライフスタイルの変化などによって徐々に乳がんのリスクが高まっています。実際に、日本では乳がんになる人が年々増えていて、乳がんが原因で死亡する女性も増えています。

乳腺は思春期に完成し、子供を産んで授乳することで乳がんになりにくい乳腺へと変化します。初潮を迎え、出産、授乳するまでの乳腺は、エストロゲン(女性ホルモン)などの発がん物質に敏感で、乳がんになりやすいのです。

年齢別に見た場合、乳がんになる人は30代から増加しはじめ、40歳代後半から50歳代前半くらいにピークとなります。また、最近では閉経後も増えています。しかし、乳がんは最もよく治るがんであり、発見が早ければ早いほど生存率が高くなりますから、自分の命を守るためにも、閉経前後の検診は特に重要なのです。

閉経後の肥満に注意する

女性の乳がんが発症するリスクは年代を経るにしたがい大きく増加していますが、原因は高齢出産や少子などのライフスタイルの変化や昔の日本よりも豊かになった食生活にあると考えられます。そして、アルコールの摂取と喫煙は、明確に乳がん発症リスクを高めます。

閉経後の発症率としては昔から欧米人のほうが高いのですが、これは食生活の違いだと考えられ、肥満は、閉経前の女性でも乳がんの発症リスクが増加する可能性はありますが、閉経後の女性ではリスクの増加は確実です。

非浸潤がんと浸潤がん

乳がんは、乳管と小葉を形成している細胞ががん化することで生まれます。がん細胞は、はじめのうちは乳管の中だけで伸びるように成長していき、これを進展といいます。やがて乳管の壁をつき破り、壁の外側にある基底膜も破ってどんどん増殖していくのですが、これを浸潤(しんじゅん)と呼びます。
このように、がん細胞が乳管内にとどまっている場合を「非浸潤がん」といい、発育して乳管の外へ出てしまったがんは「浸潤がん」といいます。

非浸潤がんのほうは転移しないがんで、乳がん全体の10~20パーセント程度を占めています。そして、浸潤がんは転移する可能性のあるがんで、乳がんが発見された人のほとんどがこの浸潤がんに当たります。

乳がんの進行、浸潤がんの病期

非浸潤がんは極めて早期の乳がんで、「0期のがん」とも呼びます。ステージも0で表されます。がんができた部分を手術で完全に切除できれば転移することはありません。しかし、放っておくといずれは浸潤がんへと成長してしまいます。

浸潤がんは、その大きさや転移の状況によって、Ⅰ期からⅣ期までに分けられます。浸潤がんのうち、しこりの大きさが2センチまでで、リンパ節への転移は認められない場合を「Ⅰ期」といいます。続いて「Ⅱ期」、「Ⅲ期」とあって、「Ⅳ期」の乳がんになると、臓器などの離れたところに転移していて完治することが難しくなります。

病期には時間の経過だけでなく性質も関係している

乳がんの進行具合を表すのには、早期や末期という言葉が用いられます。これは、必ずしもがんができてからの経過時間の長さを意味するものではありません。がんが時間の経過とともに進行していくのは間違いありませんが、それよりも、乳がんの病期にはがんが生まれながらに持った性質が反映するのです。

例えば、非浸潤がんの中には、時間が経過しても非浸潤がんのままでいるものもありますし、極めて短期間のうちに浸潤がんに成長して、遠隔転移し、末期のがんになってしまうものもあります。特に、35歳以下の若い人にできた乳がんは、一般的に増殖のスピードが速いと考えられます。