非浸潤がんと浸潤がん

乳がんは、乳管と小葉を形成している細胞ががん化することで生まれます。がん細胞は、はじめのうちは乳管の中だけで伸びるように成長していき、これを進展といいます。やがて乳管の壁をつき破り、壁の外側にある基底膜も破ってどんどん増殖していくのですが、これを浸潤(しんじゅん)と呼びます。
このように、がん細胞が乳管内にとどまっている場合を「非浸潤がん」といい、発育して乳管の外へ出てしまったがんは「浸潤がん」といいます。

非浸潤がんのほうは転移しないがんで、乳がん全体の10~20パーセント程度を占めています。そして、浸潤がんは転移する可能性のあるがんで、乳がんが発見された人のほとんどがこの浸潤がんに当たります。

乳がんの進行、浸潤がんの病期

非浸潤がんは極めて早期の乳がんで、「0期のがん」とも呼びます。ステージも0で表されます。がんができた部分を手術で完全に切除できれば転移することはありません。しかし、放っておくといずれは浸潤がんへと成長してしまいます。

浸潤がんは、その大きさや転移の状況によって、Ⅰ期からⅣ期までに分けられます。浸潤がんのうち、しこりの大きさが2センチまでで、リンパ節への転移は認められない場合を「Ⅰ期」といいます。続いて「Ⅱ期」、「Ⅲ期」とあって、「Ⅳ期」の乳がんになると、臓器などの離れたところに転移していて完治することが難しくなります。

病期には時間の経過だけでなく性質も関係している

乳がんの進行具合を表すのには、早期や末期という言葉が用いられます。これは、必ずしもがんができてからの経過時間の長さを意味するものではありません。がんが時間の経過とともに進行していくのは間違いありませんが、それよりも、乳がんの病期にはがんが生まれながらに持った性質が反映するのです。

例えば、非浸潤がんの中には、時間が経過しても非浸潤がんのままでいるものもありますし、極めて短期間のうちに浸潤がんに成長して、遠隔転移し、末期のがんになってしまうものもあります。特に、35歳以下の若い人にできた乳がんは、一般的に増殖のスピードが速いと考えられます。