乳がんはなぜできるの?

女性にとって大切な女性ホルモンが乳がんの元凶

女性の乳房は、母乳をつくるための乳腺と脂肪組織からできています。乳腺というのは乳頭の皮膚の細胞が変化してできたもので、乳腺が完成するのは思春期です。ホルモンが乳頭の皮膚の細胞に働くと細胞が変化して、管状の根が皮下脂肪の中に次から次へと伸びていきます。これが乳管です。乳管の先端は小葉に変化して乳腺がつくられます。小葉では母乳がつくられ、赤ちゃんが生まれると母乳は乳管を通って乳頭から出てきます。

乳腺をつくりだす各種ホルモンの中では、エストロゲンという女性ホルモンが最も重要な働きを担っています。エストロゲンは女性らしい体の美しさをつくるもとであり、乳腺と乳房をつくりだす原動力のようなものですが、その一方では乳がんができる手助けをして、その発育を促す要因にもなってしまうのです。

女性ホルモンには、「エストロゲン」という卵胞ホルモンと「プロゲステロン」という黄体ホルモンの2種類があり、卵巣でつくられます。エストロゲンは女性らしい体をつくりだすもので、子宮の発育や子宮内膜の増殖、乳腺の発達などの役割があります。一方のプロゲステロンは、子宮内膜に栄養が行き渡るように作用し、母乳をつくる小葉の成長と発育を促す働きをします。この2つがうまく組み合わさることで、女性の月経周期や妊娠、乳腺の発育などがコントロールされています。

この2種類の女性ホルモンのうち、乳がんの危険因子となるのがエストロゲン(卵胞ホルモン)です。「どれだけたくさんのエストロゲンにさらされたのか」が大きく影響します。例えば、初潮が早く閉経するのが遅いということは、エストロゲンの影響を長期間受けているということで、乳がんになるリスクはそれだけ高いと考えられるのです。

乳がんになりやすいのはどんな人か

女性ホルモンのエストロゲンが乳がんの発生に大きく影響することがわかったと思いますが、さらに、乳がんになりやすい条件やリスク因子として、次のようなことが考えられます。

  • 初潮が早く、閉経が遅かった
  • 初めての出産が30歳を過ぎてからだった
  • 出産や授乳の経験がない
  • 閉経後に太ってしまった
  • 血縁者に乳がんになった人がいる

乳管の細胞は、月経、妊娠、出産、閉経を通じて、めまぐるしく機能が変化します。赤ちゃんを何人も産んで母乳をたくさん出した乳腺は、乳管の細胞が分化してやがては老化し萎縮するのですが、その結果、乳がんになりにくい乳腺となります。逆に、出産・授乳の経験のない乳腺は乳管の細胞が若々しさを保ちますが、乳がんにはなりやすいといえます。
また、乳がんの中には、乳がんの人の血縁者に複数の乳がん患者がみられる「家族性乳がん」があります。これはがん遺伝子の働きによって発症するもので、BRCA1、BRCA2などの原因遺伝子が見つかっていて、こうした遺伝子を持っている人は乳がんのリスクが高くなります。

このように、乳がんになりやすい人の条件というのはあるのですが、一番のリスク要因は、成人女性であるということです。条件に関係なく、成人女性である限りは誰でも乳がんになる可能性があるのです。