薬物を用いた乳がんの全身治療

薬物療法の必要性

乳腺で生まれた乳がんは乳房の中で発育しながら、血液やリンパ液の流れにのって全身を巡り、流れ着いた臓器などで再び芽を出し、新たに発育することを転移といいます。また、転移が乳房と乳房の近くのリンパ節を越えてそれより外部へ及んだものを遠隔転移といいます。そして、転移したがん細胞が成長しレントゲン写真などではっきり見てとれるようになると再発といいます。
こうした転移や再発の危険性は、ごく早期の場合を除いた多くの乳がんで考えられます。転移したがんは、放っておくとどんどん成長し、臓器を破壊してやがて私たちの命を奪います。

局所治療である乳がんの外科手術や放射線治療は、がんが及んだ範囲内での効果しか期待できません。がんが乳房と近くのリンパ節にとどまっている場合には大きな効果がありますが、全身へ転移してしまったがんに対しては一般に無力で、転移したがんを治療するためには、全身治療としての薬物療法が必要になります。

薬物による乳がんの治療法

手術が困難な進行性の乳がんや、しこりが大きくて乳房温存手術が困難な乳がんの患者さんには、がんを縮小させて手術を可能にする目的で、術前に薬物療法をおこなうことがあります。また、乳がんのがん細胞は血液やリンパ液を介して体内の別の場所へ運ばれ、手術後もどこかに隠れている可能性があるので、こうしたがん細胞を根絶する目的で、術後に薬物療法をおこなうのです。

抗がん剤治療にはさまざまな副作用がありますが、抗がん剤治療を受けることで、乳がん患者さんの多くは再発が予防され、乳がんで死亡するリスクが低くなります。副作用を抑えるための治療も発達してきていて、以前と比べるとだいぶ楽に治療が受けられるようになっています。

乳がんの薬物療法には、化学療法(抗がん剤療法)、抗HER2療法(分子標的治療)、ホルモン療法(内分泌療法)の3つの大きな治療法があります。薬剤にはさまざまな種類があり、薬剤の組み合わせについては、サブタイプの分類により異なります。
がん細胞の性質はサブタイプによって異なるので、次のようにそれぞれのタイプに適した薬物療法(化学療法、抗HER2療法、ホルモン療法)を選択して治療を進めていきます。

乳がんのサブタイプによる薬物療法

  • ルミナールAタイプ ・・・ホルモン療法
  • ルミナールB(HER2陰性)タイプ ・・・ホルモン療法 + 化学療法
  • ルミナールB(HER2陽性)タイプ ・・・ホルモン療法 + 化学療法 + 抗HER2療法
  • HER2タイプ ・・・化学療法 + 抗HER2療法
  • トリプルネガティブ ・・・化学療法

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