乳がんだと宣告された患者さんは、これからつらい治療を始めることになります。それには、まず、自分が『がん』であることを受け入れることが必要です。
がんであることを受け入れよう
なぜ自分が乳がんになってしまったのかという思いを始め、自分はこれからどうなるのか、仕事は続けていけるのか、もし自分が死んでしまったら残された家族はどうなるのだろう、など、さまざまな不安や苦悩が押し寄せることでしょう。
がん宣告を受ければ、誰でも強い不安に襲われるのが普通です。それには治療に対する不安もありますが、それよりもがんを抱えていることの不安のほうが深刻な問題です。しかし、手術によって腫瘍を取り除くことができれば、気持ちはとても楽になります。
がんを受け入れて自分の病状を理解し、現実を受け止める。これが、すべての治療のスタートになるのです。
乳がん治療の流れを知っておこう
乳がんの治療法には、
- 手術(外科治療)
- 放射線治療
- 抗がん剤治療(薬物療法)
の3つがあり、これを、がんの3大療法といいます。
乳がんの外科手術には、乳房を全て切除する乳房全切除術(全摘)と、乳房の一部だけを切除する乳房部分切除術(温存)があります。そして、薬物療法には、化学療法、ホルモン療法、分子標的治療があります。
乳がん治療においては、がんの性質と進行具合に応じて、適切な治療法を組み合わせておこなうことが重要になります。それぞれの治療法には利点と欠点がありますので、効果と副作用をよく熟知した乳がん専門医のもと、治療を進めていきましょう。
治療の進め方としては、手術をおこなった後に抗がん剤治療を始めるのが一般的ですが、先に抗がん剤治療をおこなう場合もあります。これを「術前化学療法」といいます。手術を先におこなうのは手術によって局所のがん巣を取りきることができる可能性がある場合であり、進行した乳がんでは抗がん剤治療から始めます。また、早期の乳がん(非浸潤がん)では、放射線治療や抗がん剤治療が省略される場合もあります。
放射線治療は、部分切除された後の乳房に対しておこなわれ、乳房にできたがんと、わきの下、胸骨の近く、鎖骨の上のリンパ節(領域リンパ節)のがんの制御を目指します。順をいうと、手術の後、抗がん剤治療をおこなう前または抗がん剤治療をおこなうのと同時進行です。