乳がんと間違えやすい病気の種類

検診を受けて乳がんと疑わしい診断結果が出たり、自己検診をおこなって異常をみつけたりすると、自分はがんなのか・・・と心配すると思いますが、乳房の病気には、乳がんの症状と似ていて間違えやすい病気がほかにもあります。

乳腺症(にゅうせんしょう)

乳腺は長期間にわたって女性ホルモンの影響を受け、母乳をつくる準備を繰り返しています。その結果さまざまな病変が現れることがあるのですが、こうした病変やその集まりのことを「乳腺症」と称しています。
症状として、乳房に痛みがある、局部的にしこりのようなものがある、乳房が張った感じがする、広い範囲に厚ぼったい感触があるなど、乳がんと似ている場合もあります。
乳腺症は、女性ホルモンのバランスが乱れることが関係していて乳腺の老化現象のようなものです。ですから、本来は病気とみなされず、乳がんではないが乳房に何らかの異常があるという意味で広く使われています。
乳腺症と乳がんは直接の関係はありませんが、乳腺症で現れた症状は、乳がんのリスク因子となります。また、「乳腺症ですから様子をみましょう」といわれたものの中に乳がんが隠れている場合もありますから、経過観察をする必要があります。

乳腺炎(にゅうせんえん)

乳腺炎というのは、細菌感染などによって起こる乳房の感染症です。部分的に赤く腫れて痛みが出たり、膿(うみ)がたまってしこりができたりします。授乳期の女性に見られることが多く、乳管の中に母乳が詰まって、そこに乳頭にできた傷などから細菌が侵入して感染します。
そのほか、陥没乳頭の人にも起こりやすいです。引っ込んだ乳頭内に分泌物が詰まり、細菌が感染して発症します。治療しても繰り返して炎症が起こり、直りにくいこともあります。
治療は、抗生物質を内服したり、膿がたまっているときは注射器で吸ったり切開したりして膿を出します。
乳腺炎は炎症性乳がんと症状が似ていて区別が難しいので、異常を感じた場合には早めに専門医を受診しましょう。

乳管内乳頭腫(にゅうかんないにゅうとうしゅ)

乳管内乳頭腫は、乳頭の近くの太い乳管にできる良性のしこりです。40~50歳代の人に多く見られます。しこりは柔らかくて小さいものが多いのでわかりにくいのですが、乳頭から血のまじった分泌液が出ることがあり、乳がんとの区別が難しい病気です。画像診断や生検で診断を確定する必要があります。

線維腺腫(せんいせんしゅ)

線維腺腫は、10~30歳代の比較的若い人に多くみられる、しこりができる病気です。このしこりは正常な細胞が過剰に増殖してできたもので、腫瘍ではありません。しこりの境界がはっきりわかり、乳腺の中でよく動くという特徴があります。たいてい2~3cmほどの大きさですが、患者のうち30%くらいの人は、そのままにしておいても自然と小さくなって気にならなくなります。ただし、しこりの大きさが3cm以上ある場合など、葉状腫瘍(ようじょうしゅよう)という悪性の可能性もある病気と区別が難しいので、細胞診や生検をおこなって確実な診断を受けたほうがよいでしょう。また、経過観察が必要な場合もあります。

葉状腫瘍(ようじょうしゅよう)

葉状腫瘍は線維腺腫とよく似た腫瘍で、しこりの大きさは線維腺腫よりも大きいことがあります。腫瘍の多くは良性ですが、悪性のものもあります。葉状腫瘍が疑われる場合は切除が必要になりますが、切除しても再発を繰り返すことがあり、骨や肺などに遠隔転移するものもあります。術後も定期的な検査が必要です。