正常な細胞というのはそれぞれに役割があって、私たちの体の制御のもとにその機能を果たしています。しかし、いろいろな要因によって細胞が変化し、体の制御を離れて、異常な増殖を始めることがあります。その結果としてしこりができますが、それを「腫瘍」と呼びます。
良性と悪性のしこりの違い
しこり(腫瘍)には良性のものと悪性のものがあります。良性のしこりの場合、あるところまでいくとそれ以上は増殖をしません。そして、良性のしこりは一般に増殖の速度が緩やかで、周囲の組織とは明瞭な境界があり、転移や浸潤の傾向を示しません。その一方、悪性のしこりの場合はいつまでも異常な増殖を続けて、周囲の組織へ浸潤したり、遠隔転移を起こして、やがては私たちの命を奪うこともあります。この悪性のしこりが「がん」なのです。
良性のしこりでも、脳にできる脳腫瘍のように、腫瘍の場所によっては予後が悪い場合もあります。子宮筋腫のように、悪性化はしないけれども、大きくなるとさまざまな症状を引き起こすこともあります。
乳房のしこりには、乳管内乳頭腫や線維腺腫といった良性のしこりがあります。乳腺症もこのような良性の病変が集まったものです。一般には良性のしこりは体に危害を加えないので、診断がきちんとつけば、放っておいてもかまいません。ですから切除する必要はありませんが、特に大きくなってしまったものや、良性か悪性かの判断が困難な場合には、腫瘍の切除が勧められます。
良性のしこりだと診断がついたものでも、悪性に変化するのではないかと、心配になる人もいるでしょうが、乳腺にできた良性腫瘍が悪性のがんに変化することはほぼありません。ただ、乳腺にできる腫瘍には良性か悪性かの診断が難しいものが多いので、定期的に検査を受けておくと安心です。
信頼できる専門医をみつけることが大事
がんの治療においては、初期治療でその後の運命が決まるので、信頼できる専門医に出会えるかが大事になります。しかし、実際には、がんを宣告されてから治療の開始までにはあっという間の時間しかなく、心から信頼できる専門医をみつけることは容易なことではありません。乳がんの診断を受けた施設からの専門医の紹介が一般的だと思いますが、医者と患者の間には相性の問題もあります。そんなときには、セカンドオピニオンを受けることもひとつの手段です。