乳がん検診を受けるには、地方自治体がおこなう検診や、加入する健保組合や事業所による検診、個人で任意で受ける検診があります。
厚生労働省では日本国民のがん検診の受診率が50パーセント以上になることを目標にがん検診を推進していて、乳がん検診の場合、「40歳以上の女性に対して、2年に1回、問診及びマンモグラフィ検診をおこなう」ことが指針で定められています。地方自治体による検診では、ほとんどの市町村でがん検診の費用の多くが公費で負担されているので、私たちは一部の自己負担でがん検診を受けることができます。
乳がん検診には、医師による問診や視触診のほか、超音波(エコー検査)やマンモグラフィ(エックス線検査)という画像検査があります。
視触診では、医師が乳房を観察したり手で触れて、しこりや変形が無いか、乳頭からの分泌物が無いか、リンパ節が腫れていないかなどを調べます。視触診だけなら体に負担はかかりませんが、小さな乳がんを発見することは難しいので、超音波検査やマンモグラフィを合わせておこないます。
マンモグラフィと超音波検査は、それぞれの物理学的特性を活かした検査方法で利点があります。どちらか一方よりも、両方受けることが望ましいです。
マンモグラフィ(乳房X線検査)
マンモグラフィとは、乳腺専用のX線(エックス線)を用いた検査法で、乳がんの検診手段としては最も基本的です。プラスチックの板で乳房をはさんで平らにして、専用のX線装置で乳房全体を撮影します。
マンモグラフィの優れている点は、しこりだけでなく、しこりの前段階の微細な石灰化した病変を発見できるところです。視触診だけでは発見することができないしこりや、石灰化した小さな乳がんの発見に適しています。ただし、乳腺が発達している若い女性や、乳腺濃度が高い(デンスブレスト)女性では乳腺組織が全体に白っぽく映ってしまうため、初期の乳がんを発見しにくい場合があります。欧米人女性と比べ、日本人女性にはデンスブレストの人が多いようです。
デメリットとして乳房を圧迫するときに痛みを感じることがあるので、マンモグラフィを敬遠する女性もいるようですが、乳房をじゅうぶんに引っ張って平たくするのは、撮影に必要な放射線量を最小限に抑えて、より正確な画像にするためです。検査を受けるには月経の前の時期を避けたほうが、比較的痛みは和らぎます。また、放射線による被ばくの心配がありますから、妊娠の可能性がある場合には申し出たうえで検査を受けましょう。
超音波検査(エコー検査)
超音波検査とは、人間の耳には聞こえない周波数の高い音を機械から発射し、跳ね返った音を画像化したもので診断する検査です。超音波を出す器具を直接乳房に当てて、写し出された画像を見ながら診断をおこないます。
超音波検査では、触診ではわからない大きさのしこりを発見することができます。また、しこりが良性であるか悪性であるかの判別診断に優れています。
放射線被ばくを避けたい妊娠中の人、強い乳腺症などで良好な撮影ができない人や高濃度乳腺(デンスブレスト)の人、乳房の圧迫に耐えられない人などにはこの超音波検査が適しています。安全な検査方法ですから、安心して検査を受けられるというのが、大きな利点です。