延命治療

延命治療について、どのように考えればよいのかがわかりません。

がんの末期を迎えた方の延命治療は、胃がんだからということはなく、どの臓器のがんでも大きな違いはありません。延命治療は死期がせまってきて、意識がなくなったあとに人工呼吸器やペースメーカーなどを用いることですが、一般的にはほとんどおこなわれていません。

患者さんの容態が急変して、どうしても家族の到着を待たねばならないなど、特殊な事情がない限り、最期を静かに看取ることが多いようです。

最近はがんの告知を受ける方が増えているということもあり、患者さんご本人が延命的処置を一切拒否されることが多く見られます。しかし、最期の時点で、患者さんの苦痛が大きければ延命治療で症状をやわらげることもあります。

たとえば末期症状では、がんによる腹膜炎のため腹水が大量にたまって腹部が張ったり苦しかったり、尿管にがんが入り込んだことから尿が出なかったたいしようりようほうりするからです。このような苦痛を取り除く治療(対症療法)も、.呼吸器やペースメーカーを用いた処置とは異なりますが、やはり延命治療のひとつといえるでしょう。

がんの再発した部位によって症状は異なりますが、胃がんはほかの臓器のがんに比べて、比較的穏やかな末期を過ごすことができます。

たとえば、食道がんや肺がんは気管やのどにがんができるため、呼吸をしたくてもできないと苦しまれることが多く見られます。延命治療をするかどうかは、ご家族と相談して決定します。ご家族もただ「延命」を望まれることはなく、患者さんの苦痛を取り除くためにとお考えになられるようです。

ホスピスのメリット

ホスピスについて、教えてください。病院とどう違うのですか。

病院では治療の可能性が残されていれば、あらゆることをします。切除ができなければ抗がん剤を使って少しでも腫瘍を小さくし、症状をやわらげることを考えます。

口から食事がとれなければ、高カロリー輸液などの処置を講じます。ホスピスでは身体的な苦痛(痛みや吐き気、嘔吐、全身倦怠感) をできるだけ薬剤で軽くして、おだやかな余命を過ごせるよう配慮します。

がん対する治療は放棄することになります。ホスピスに入院される日数は平均で40日ということです。病院では、手術を受けたばかりで希望を抱いている人も、余命が限られた人も同じところで生活しています。寝たきりで動くことがままならない人は、同室の魯者さんが退院していくのを見るのは、さぞかしっらいでしょう。そのような場合、同じような病状の人が集まっている「ホスピス」で暮らすのもよいと思います。私どもも患者さんをホスピスに紹介することがあります。そのような魯者さんはすでに告知を受けているため、「落ち着いたご様子で最後までお過ごしになりました」という報告をもらっています。なお、ホスピスは病院の一般病棟と同様、健康保険が適用になりますが、現在国内の施設はあまり多くないため、入所できる人は限られています。

自宅で行えるガン治療法はある?

末期がんでは在宅ケアという方法もあるそうです。どのようなものですか。

患者さんが自宅で病状の管理を受けられるシステムです。やり残した仕事をしたり、家族との日常生活を過ごしたりなど、人生の終末を過ごすのにふさわしい環境をつくることができます。

痛み止めと点滴により管理できる人を対象にして、外来の看護師数人がチームを組んでケアをしています。これまではいくら患者さんから「家に帰りたい」といわれても、まるで病院にしばりつけているようでした。

しかし、いまは痛みがあっても、食べられなくても条件が揃えば退院できます。食べられない場合は、在宅で中心静脈栄養の点滴をします。

ケアを担当していた看護師は、患者さんの家族から、「最期の日まで夫婦一緒に枕を並べて寝ることができました。とても感謝し、満足しています」といわれたそうです。

いよいよのときが近づいたという場合は、病院へ搬送して、最後を迎え死亡を確認します。在宅ケアは健康保険でカバーされている治療のひとつです。在宅ケアをしてくれる看護師がいれば希望できるでしょう。

入院している病院にシステムがなければ、在宅看護を専門に引き受けている業者に頼むこともできます。正直なところ、病院経営としては赤字になるのですが、患者さんへのサービスのひとつと思って続けています。このように末期がんの治療は選択肢が広がってきました。