今の社会では、ガンで亡くなるのが当たり前というほど、ガン患者が急増しました。日本人の約4分の1 、最近では3分の1の人、これだけの人ががんで亡くなっているのです。
親戚の中にもガンで亡くなった人が必ずいるはずです。もちろん、ガンと闘病している人も身の回りにいらっしゃるはずです。
昔は、これほど多くの人ががんで亡くなることはありませんでした。10年くらい前は、死亡原因の上位5位以内にさえ、人らないほどだったのです。では、なぜがんはこんなに増えてしまったのでしょうか。いちばん大きな原因は、寿命が延びたことにあります。がんは50才以上になると、とたんに発症しやすくなるのですが、明治・大正時代の日本人の平均寿命は50才未満で、がんになりやすい年齢になる前に、ほかの原因で亡くなっていたわけです。
現在、日本人の平均寿命は80才を超え、世界一の長寿国になりました。人間の体を構成する細胞は、年をとるほど、がん化しやすくなります。ですから、発がんする日本人が増えているのですが、なぜ、年をとるほど細胞ががん化しやすいのか、そのメカニズムを説明しましょう。
体は約60兆個もの細胞が集まってできています。その細胞のすべてにがんの遺伝子が含まれているのです。つまり皆、がんになる遺伝子を持っているのです。それでもだれでもがんになるわけではありません。というのは、通常、がん遺伝子は、細胞の中でおとなしく眠っていて、活動を開始しないからです。
この眠れる遺伝子を目覚めさせる生みの親がいます。イニシエーターと呼ばれる「発がん仕掛け物質」がそれです。イニシエーターによって目覚めたがん遺伝子は、しかし、まだ本物のがんではなく、がんの芽ぐらいのもの。まだひ弱なので、私たちの体に備わっている免疫力や抵抗力で消滅させることができます。ところが、免疫力や抵抗力がなく、プロモーターと呼ばれる「発がん促進物質」の影響を受けると、目覚めたがん遺伝子を持つ細胞は変化し始めるのです。無限に分裂して増殖し、隣の組織や臓器に入り込んで増えたり、遠く臓器に飛び火して増える(転移する) がん細胞となるのです。
このようにがん発症までには、2つの段階があります。それぞれの段階で細胞をがん化する物質、イニシエーターとプロモーターは、身の回りにたくさん存在します。人間は、20才になるとだれでも体のどこかにがんの芽ができています。その芽が発がん物質に20~30年くらいさらされることで、「早期がん」にまで成長してしまうのです。ですから、この20~30年をどのように過ごすかが、がん予防のポイントといえます。
幸いなことに、長年の研究場の結果、食べ物の中にはイニシエーターやプロモーターといった発がん物質の働きを抑える役割を持つものがあることがわかってきました。特に日本人に多いがんは、胃、大腸、食道などの消化器系のがんですから、それだけ食生活、食習慣とかかわりが深いということです。具体的に、どのような食べ物にがん予防の効果があるのか、日ごろからこれらを積極的に食事のなかにとりいれるようにして、がんの芽を本物のがんに育てないようにしたいものです。
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