胃がんや食道がんの多発地城として知られる、中国河南省の林具という農村で約3万人を対象に5年間にわたる追跡調査が行われました。
住民たちマイクログラムにβカロチン15mg、ビタミンE 30mg、セレン(セレニウム) 50μg (1μg= 1gの10万分の1) を毎日飲んでもらい、その結果が驚くべきものでした。
これらの微量栄養素を毎日摂取したグループの5年間のがん死亡率は、摂取しなかったグループにくらべ13%も低く、特に胃がんでの死亡率は21% も低下していました。
人間の体内では、フリーラジカルと呼ばれる酸化作用の強力な悪玉物質が絶えず発生しています(酸化とはサビつくことです)。このフリーラジカルによって細胞が攻撃され、遺伝子や細胞膜が酸化されると、がん細胞ができ上がるのです。
βカロチンやビタミンEは細胞膜に存在し、フリーラジカルの攻撃から細胞を防衛しています。細胞内では、また数種類の酵素がフリーラジカルの掃除にせっせと働いていますが、その一種であるグルタチオンペルオキシターゼの構成成分として欠かせないのが、調査にも使われた微量元素・セレンです。
セレンは、植物ではゴマに豊富に含まれ、10g のゴマで約53μgのセレンをとることができます。穀類や魚貝類にも多く含まれますので、平均的な日本人の食生活で1日12μgのセレンを摂取できます。しかし、肉に偏りがちな食生活のかたは、食卓にゴマを常備しておき、1日10gを目安に食べましょう。これで効率よくセレンを補うことができます。
ゴマの常食をおすすめしたいのには、もうひとつ理由があります。セサミノールという、ゴマ特有の抗酸化物質をとることができるからです。
揚げ物に植物油を使うと加熱によって酸化が進み、油が黒ずみます。植物油には、抗酸化作用のあるビタミンEが豊富に含まれていますが、それをもってしても抑えられないほどの酸化なのです。しかし、同じ植物油でもゴマ油を使うと黒ずむことがありません。ビタミンEでは抑えられない油の酸化でさえも、ゴマ油特有の成分には抑えることができるからです。この成分は、ゴマからゴマ油を精製する過程で生じるセサミノールであることが、明らかになりました。
セサミノールはゴマ油に含まれるだけでなく、ゴマを食べると、腸内細菌の働きで腸管内でセサミノールが生成するともわかりました。吸H収されたセサミノールは血液によって全身の細胞に運ばれ、乞てのすぐれた抗酸化作用でフリーラジカルの攻撃から細胞を守ってくれることが期待されるのです。
細胞の中の遺伝子がフリーラジカルによって酸化されると、その傷が修復される過程で8-OHdG(8-ヒドロキシデオキシグアノシン)という物質が尿中にふえます。つまり、8-OHdGは体内で遺伝子がどれだけ酸化され、がん化しかけているかを示す指標といえます。
ゴマを食べれば、セサミノールが体内で抗酸化作用を発揮して細胞のがん化を防いでくれる可能性も実験によって明らかになっています。摂取量の目安は、1日10gですが、有効成分がきちんと吸収されるよう必ずすりゴマのかたちで食べるのがポイントです。
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