カロリー制限よりも糖質制限に重点を置く

従来、肥満・生活習慣病の予防や糖尿病の治療には、「カロリー制限」を主とした食事指導が行われてきましたが、カロリー制限では肥満も糖尿病も解消されません。日本糖尿病学会や日本の栄養士さんたちはいまだにカロリー制限に固執していますが、アメリカなどでは糖質制限による肥満や糖尿病治療へのシフトがなされているのが現状です。

人間が食事からとる3大栄養素は糖質、たんばく質、脂質です。この3大栄養素をカロリーで見ると糖質とたんばく質は、1g あたり4 キロカロリーです。対して脂質は1g あたり9 キロカロリーと、糖質・たんばく質の倍以上のカロリーになります。

そのため、カロリー制限ではとにかく脂質を控えることが重視され、肉類などの動物性脂肪を控えるのはもちろん、揚げ物料理を避ける、調理油もできるだけ少なくと、油っけのない食事が理想のように考えられてきました。

しかし、そうしたカロリー制限では糖尿病や肥満がなかなか改善しないケースが多かったことから、注目が集まるようになったのが糖質の存在です。糖質は、ご飯やパン、麺など、いわゆる主食の炭水化物に多く含まれます。

イモ類や根菜類も糖質の多い食品ですし、砂糖やブドウ糖、果物の果糖などの糖類も、糖質の一種です。日本人が好きなおせんべいやあめ、ガム、ようかん、ビスケット、カステラ、ケーキなどにも大量の糖質が含まれていますので、注意しなければいけません。

糖質オフはガンも防ぐ

糖質は、人間の体に入ると主に活動のエネルギー源として使われますが、使い切れずに余った糖質は、中性脂肪に変換されて体内に蓄積されることがわかってきました。

つまり、どれだけ高カロリーの脂質を減らしても、炭水化物や砂糖などの糖質を多くとり過ぎていれば肥満やメタボの解消にはならない、ということです。また、3大栄養素の中で血糖値を上げる作用をもつのは、唯一糖質だけです。糖質をとると血糖値が急上昇するため、人間の体は血糖値を下げるホルモンであるインスリンを膵臓から分泌し、血糖値を安定させようとします。

この肥満ホルモンと呼ばれるインスリンが血液中に多い「高インスリン血症」の状態が長く続くと、肥満を助長し、細胞を刺激してがん化を促し、がんのリスクが高まるといわれています。

糖質とがんとの関係では、糖化最終生成物(AGE)の話もあります。糖化最終生成物とは、体内の余った糖質と蛋白質が結合してできるものです。
これは一度できると体内に長く留まり、皮膚や全身の細胞を老化させてしまいます。AGEによって血管や重要な細胞が傷つくと、ガンや生活習慣病、認知症などの原因になることもあります。

血管の老化を早めて合併症を招くAGE

重要なことは、いろいろな食品にいかに多くの糖質が含まれているかということです。糖質というと、甘い物などを想像しがちですが、むしろご飯や麺類などの炭水化物に多く含まれています。

ご飯や麺類やパンなどの炭水化物は砂糖などと同じ糖質でできていますので、注意が必要です。糖質とは甘いお菓子のように砂糖でできているものだけではないのです。わかりやすいたとえとして、角砂糖1個が糖質4g でできていますので、ご飯茶碗1杯の糖質量は約5gとなり、そうなると、ご飯茶碗軽く1杯で角砂糖14個分も摂取してしまうこととなります。

本来、糖質も生命維持に欠かせない栄養素のひとつですが、体に必要な糖質はほんの少しで事足りるのです。角砂糖何個分の糖質が含まれているかを把握することにより、「とてもじやないけど、こんなに多い量の角砂糖は食べられない」と感じることができるようになる認識がとても大切です。

特に夕食にご飯などの炭水化物を抜くと非常に効果的です。最初はとてもつらくて、お腹がすくことが強く感じられますが、ちょっとの我慢をして3週間この習慣を継続していくと体が次第に糖質を欲しなくなりますので、ぜひ実践してみてください。

糖質制限で善玉コレステロールを増やすことも可能です。