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ごぼうの「リグニン」が大腸ガンを抑制

ごぼうには、食物繊維が10 g中に8.5 gも含まれます。これは、たくさんある根菜のなかでも群を抜く量で、特にリグニン、セルロース、ヘミセルロースといった非水溶性(水にとけない) の食物繊維の働きが注目されます。日本人の大腸ガンは、ここ最近でも急増しています。
最近の日本人の腸の傾向とさまざまな症状では、近年の日本人の腸の傾向がわかりやすく書かれています。

水にとけない食物繊維は、腸の健康に欠かせません。便のかさ・量をふやすとともに、腸を刺激して、嬬動運動を活発にし、排便をスムーズに促進する作用があるからです。

便秘をすると腸内に発がん物質が長くとどまってしまうことから、それが大腸がんの引きがねにもなります。毎日、便がスムーズに出ていれば、腸内環境が整えられて、大腸がん予防にも大きく影響します。
なかでもリグニンは、切り口の数が多ければ多いほど、どんどんふえてくるという特徴のある食物繊維です。
これは「傷害リグニン」というものです。
傷ついたごぼうは、自分の身を修復するために、リグニンをたくさんつくり出そうとする性質によるものです。
ですから、同じ10 gのごぼうでも、食物繊維をとる目的で食べるのなら、切り口ができるだけ多い調理法がおすすめなのです。
そういった意味では、きんぴらもたたきごぼうもおすすめですが、なんといっても究極は「すりおろし」です。

人間は、加齢により、腸の蠣動運動が弱まり、便秘がちになります。おろしごぼうなら、お年寄りにも食べやすく、食物繊維がたくさんとれて、便秘解消に役立ちます。

リグニンの働きをより高めるためには、「メチオニン」とともに摂取するのがおすすめです。。メチオニンは必須アミノ酸の一種で、肉・魚・卵二見類などに多く含まれます。

ごぼうとメチオニンの多い食品という組み合わせが、リグニンを最も効率よくとれる食べ方ということになります。
ただし、ごぼうは、切り口が空気にふれると、すぐに褐色に変色してしまうため、調理には少し工夫が必要です。ごぼうを洗って皮をむいたら、すりおろす前に、10分以上は酢水につけます。これで色が変わってしまう心配はありません。
すりおろしたあとにも、酢を少量まぶすとさらに効果的です。
こうした下処理をすれば、すりおろしごぼうは、ドレッシングにまぜても、そぼろにしても、煮物に加えても、白あえにまぜてもおすすめです。
香りのよさと、意外な食感は料理の幅を広げます。特におすすめしたいのは、ごぼうとニンジンのすりおろし+ 少量の肉で作ったそぼろです。ニンジンのガン抑制効果はこちらで説明したとおりです。
おかゆやごはんによく合い、かたいものが苦手なお年寄りも、これなら楽にごぼうの繊維をとることができます。薄めの味つけにしておいしく食べるといいでしょう。
ごぼうは積極的に摂りたい食材です。
ごぼうのプロフィールはこちら。便秘がちの方はゴボウ茶もおすすめです。

にんじんのβカロチンがガンを抑制

ヨーロッパの人はニンジンを「人を愛想よくさせる野菜」とぶほどニンジンは人気の野菜です。。そのすばらしい薬効によって、心身ともに健康で活力にあふれ、笑顔が絶えなくなるということをさしてこう呼んでいるのでしょう?。
ニンジンには、β カロチンが100g中7300単位も含まれます。ほかの野菜とは比較にならない豊富な量です。がん予防食品としては欠かせません。
「がん予防ビタミン」として有名なビタミンA 、C、E もたっぷり含まれています。
これらは、抗酸化作用にすぐれている「体の毒消し物質」です。
ここ最近でよく聞かれるようになった「デトックス」にもニンジンは、最適だと推奨されています。

人間が生きていくうえで欠かせない酸素は、その一部が体内で「活性酸素」という毒物になります。
活性酸素が体内の脂肪と結びつくと、さらに過酸化脂質という新たな毒物を生み出して、体をサビつかせます。この「サビ」が、がんや高血圧、動脈硬化を起こして心筋梗塞や脳卒中のもととなる高脂血症、糖尿病といった成人病はもとより、肝臓病、腎臓病などあらゆる臓器の疾患、シミ、シワ、関節の痛みや変形などの老化、アレルギー症状など万病の元凶となるのです。
ちょうど工場で「産業廃棄物」が出てしまうような現象が、人間の体内で起こるのです。
人間のの体内で生じる活性酸素も、産業廃棄物と同じです。毒消しの処理を行うか行わないかが、私たちの健康を左右するといっても過言ではありません。

ニンジンは、βカロチン(プロビタミンA) やビタミンC、E の豊富な「毒消し健康野菜」です。活性酸素の害を消して体を守る物質を「スカベンジャー」といいますが、ニンジンはスカベンジャーの宝庫です。
便秘や動脈硬化を防ぎ、腸内の善玉菌をふやすほかにもニンジンの薬効は数えきれないほどあります。たとえば組織の粘膜(上皮細胞)を丈夫にして、目や口、気管や肺を守ります。また、腎臓の機能を高めたり、精子をふやすなど生殖機能の向上にも有効です。
ビタミンB群の中のパントテン酸は、腸の運動を促進するため、便秘にも下痢にも有効です。ニンジンには、ヘミセルロースとペクチンという食物繊維が豊富です。食物繊維は、脂肪や糖分をゆっくりと吸収させて、インスリンの急上昇を抑えます。
また、10種100兆個以上もある腸内細菌のエサとなって、腸内の環境を整えます。

胆汁酸の再循環を促して余分なコレステロールを排出し、動脈硬化を予防する働き、便のカサをふやして、便秘や大腸がんを防ぐ働きも絶大です。
ガンだけでなく、肥満や糖尿病を気にされるかたも、ぜひおすすめの食材です。
また、各種のホルモンを調整する内分泌系も整えてくれます。

にんじんをある程度たくさん食べたり摂取ようにするのはなかなか難しいのですが、無添加無農薬のジュースがありますのでおおすすめです。「生絞り」「100%」などと記載のある商品を選ぶのがおすすめです。

「らっきょう」の3大成人病抑制効果

日本人の3大成人病といえば、「がん」「脳血管疾患(血栓症)」「心臓病」です。こうした病気は、自分には関係ないと思っている人がほとんどですが、知らず知らずのうちに進行しますから、いま健康に不安がないという人でも、油断は禁物です。そして、割合的には、こられの3大成人病で亡くなるほうが確率としては高いのです。

これらの病気は、予防が肝心なのですが、といっても特別なことが必要なわけではありません。身近なところでは、「ラッキョウ」などで手軽に、生活習慣病(成人病) を予防することができます。ラッキョウというと、カレーライスのつけ合わせ程度にしか思われないかもしれませんが、じつはすぐれた薬効が詰まっていることがわかってきました。
中国には「傷寒論」と並んで「金匱要略」という漢方薬の古典がありますが、これによると、らっきょうは胸痺に効くと記されています。
胸痺とは、狭心症をさします。ご存じのように、狭心症は心臓の血管が細くなって起こる病気のことで、悪化すると心筋梗塞の危険性も高まります。狭心症や心筋梗塞といった心臓病は、何らかの原因で血液の粘度が増し、心臓の冠状動脈(心臓に血液を運ぶ血管) に血栓(血のかたまり〉ができ、血管が詰まってしまうことが原因で起こります。
また、心臓だけでなく、脳の血管内に血栓ができて詰まれば、脳血栓症という脳卒中を引き起こしてしまいます。つまり、血栓を防止することこそが、心臓病や脳血栓症の予防になるのです。そして、ラッキョウには血液の流れをサラサラにして、血栓をできにくくする作用があります。

血栓防止だけでなく、ラッキョウはがんにも有効です。これまでにも、動物実験などにより、複数のがんに効果を示すことが確認されています。

肺がんに関する実験を紹介します。マウスに薬物を投与し、肺がんが発生するようにしました。そのマウスに、ラッキョウを含む漢方薬を与えたグループと、与えないグループとを比較し、肺がんの発生率を調べてみたのです。らっきょうの成分を含む漢方薬としては、括呂薤白白酒湯(かろうがいはくはくしゅとう)を使っています。

括呂薤白白酒湯(かろうがいはくはくしゅとう)という漢方薬は、もともと狭心症の薬として使われています。

さて、実験結果ですが、括呂薤白白酒湯(かろうがいはくはくしゅとう)を与えないマウス群では、肺の腫瘍発生率は、当然のごとく100% 。マウス1匹あたりの平均腫瘍数は8.43個でした。
一方、括呂薤白白酒湯(かろうがいはくはくしゅとう)を与えたマウス群では、驚くことに、肺に腫瘍が発生したのは73% 、平均腫瘍数は2.5個でした。この実験結果から、ラッキョウには肺がんの発生を抑える働きがあるといえます。
また、皮膚がんに関しても、ラッキョウには強力な抑制作用があることが実験によって証明されています。
こうした効果は、ラッキョウに含まれるサポニンという特殊な成分と、イソリクエチゲニンによるものだと考えられていますが、いまのところ、はっきりしたことは、わかっていません。
そして最近になり、大腸がんにも有効なことが確認されています。大腸がんは食生活の欧米化に伴い、ここ数年、日本人に急激に増加傾向にあります。食生活が動物性食品など高カロリー食に偏ると、腸内細菌のバランスが崩れたり、腸内で炎症が起きるなどして、大腸がんの原因をつくってしまうためです。動物性食品の過剰摂取などは控えるなどの食習慣の改善も同時に行わなければなりまえs

ラッキョウには、イソリクエチゲニンという化合物が含まれており、これが腸内環境を整えて、がんの発生を抑えてくれるのです。
イソリクエチゲニンにはすぐれた抗酸化作用(がんの発生原因となる活性酸素を抑える働き) もあり、これもがん抑制に多いに役立っていると考えられています。
このように、心臓病、脳血栓症のほか、ラッキョウは肺がん、皮膚がん、大腸がんの予防にも有効だといえます。1日に3個程度食べれば、こうした予防効果は十分期待できます。ただ、殺菌作用が強いため、食べすぎると胃に悪いので、食べ過ぎには注意します。

にんにくの独特のニオイのもとがガンを抑制する

ニンニクには、独特の香りや味にクセがありますが、ガンに対する有効成分含まれます。ニンニクは、味、香りともに日本人に好まれる味です。元気がないときでもあのニンニクの香りをかぐと食欲がでてきたりします。

ニンニクやタマネギ、ラッキョウなどのネギ頬は、生薬としても用いられるものが多く、まさに医食同源に合致する素材としても知名度が高いものです。健康食品などにもニンニクが含まれる製品がたくさんあります。

ニンニクの発がん抑制効果が注目されるきっかけとなったのは、人を対象にした疫学的な統計研究からです。たとえば中国の調査には、次のようなものがあります。「ニンニクを年間1・5kg以上摂取する人は、ほとんど摂取しない人と比較してがんのリスクが0.5倍である」と発表されました。
これは、がんにかかる率は半分になるという証明です。

イタリアの疫学調査でも、胃がんのリスクが低下すると報告されています。その後、世界じゅうで行われている実験や研究から、特に、胃や大腸など消化器系のがんに対する効果が期待されています。日本で行った実験では、発がん物質を塗布したマウスは皮膚腫瘍が10% 発生したのに対して、同時にニンニク抽出液を塗布すると腫癌発生率が0% に抑えられたという結果がでているほどです。

では、実際にどのような成分ががん予防に働き、作用するのでしょうか。ニンニクには独特のにおいがあります。においのもとは含硫化合物、つまり硫黄を含む化合物なのですが、これががん予防の有効成分のひとつです。
含硫化合物は、ものの毒性を消す働きをする、解毒酵素系を活性化させるのです。仮に、体内に、活性化した発がん物質があったとしましょぅ。このようなときにニンニクを食べると、含硫化合物が解毒酵素系を活性化し、それにょって、発がん物質の毒性を消すのではないか、と考えられているのです。
ただし、それだけではないことは明白で、ほかのメカニズムが複合的に協力しあって、より強い発がん抑制効果を示すという考え方のもとに、研究されています。

ニンニクにキズをつけたり加熱したり、物理的な力が加わると、アリキシンという物質が生成されます。ニンニクが自分を守るために作る自己防御物質なのですが、これに、発がんのプロモーション段階を抑制する作用があることが実験で証明されました。ニンニクの身を守る物質が、われわれの身も守るという点も興味深いところです。
アリキシンが生成されるには数時間から数日かかりますから、たとえばしょうゆ漬けや、ハチミツ漬けなどにするのは効果的です。

それからもうひとつ。ニンニクには、土壌に含まれるセレン(セレニウム) というミネラルをため込むという特性があります。おもしろいことに、このセレンも、がん予防物質として注目されているのです。
土壌中のセレンは無機セレンであり毒物ですが、植物に吸収されると有機セレン(セレンが組み込まれた有機化合物) に変わり、有効に利用できる形になるのです

ニンニクにはその特性があるということです。さて、がん予防のための有効量はどの程度なのか。先に紹介した中国の疫学調査を参考に計算すると、1.5 kgを365日で割った1日約4 g( ニンニク1個中のひとかけ) という答えがでますが、確定的な指標ではありません。

とりあえず、現在の段階でいえるのは、ニンニクを使うことでおいしい料理ができるのであれば、積極的に利用してほしいということです。
どのような調理法でも、けっこうです。焼いて食べたりするほか、野菜いため、焼き肉の香りづけに使うなど、好みに応じて無理なく、摂取してはいかがでしょうか。

やわたの熟成にんにく卵黄

ガンは誰もがかかる可能性がある

今の社会では、ガンで亡くなるのが当たり前というほど、ガン患者が急増しました。日本人の約4分の1 、最近では3分の1の人、これだけの人ががんで亡くなっているのです。
親戚の中にもガンで亡くなった人が必ずいるはずです。もちろん、ガンと闘病している人も身の回りにいらっしゃるはずです。
昔は、これほど多くの人ががんで亡くなることはありませんでした。10年くらい前は、死亡原因の上位5位以内にさえ、人らないほどだったのです。では、なぜがんはこんなに増えてしまったのでしょうか。いちばん大きな原因は、寿命が延びたことにあります。がんは50才以上になると、とたんに発症しやすくなるのですが、明治・大正時代の日本人の平均寿命は50才未満で、がんになりやすい年齢になる前に、ほかの原因で亡くなっていたわけです。

現在、日本人の平均寿命は80才を超え、世界一の長寿国になりました。人間の体を構成する細胞は、年をとるほど、がん化しやすくなります。ですから、発がんする日本人が増えているのですが、なぜ、年をとるほど細胞ががん化しやすいのか、そのメカニズムを説明しましょう。
体は約60兆個もの細胞が集まってできています。その細胞のすべてにがんの遺伝子が含まれているのです。つまり皆、がんになる遺伝子を持っているのです。それでもだれでもがんになるわけではありません。というのは、通常、がん遺伝子は、細胞の中でおとなしく眠っていて、活動を開始しないからです。
この眠れる遺伝子を目覚めさせる生みの親がいます。イニシエーターと呼ばれる「発がん仕掛け物質」がそれです。イニシエーターによって目覚めたがん遺伝子は、しかし、まだ本物のがんではなく、がんの芽ぐらいのもの。まだひ弱なので、私たちの体に備わっている免疫力や抵抗力で消滅させることができます。ところが、免疫力や抵抗力がなく、プロモーターと呼ばれる「発がん促進物質」の影響を受けると、目覚めたがん遺伝子を持つ細胞は変化し始めるのです。無限に分裂して増殖し、隣の組織や臓器に入り込んで増えたり、遠く臓器に飛び火して増える(転移する) がん細胞となるのです。

このようにがん発症までには、2つの段階があります。それぞれの段階で細胞をがん化する物質、イニシエーターとプロモーターは、身の回りにたくさん存在します。人間は、20才になるとだれでも体のどこかにがんの芽ができています。その芽が発がん物質に20~30年くらいさらされることで、「早期がん」にまで成長してしまうのです。ですから、この20~30年をどのように過ごすかが、がん予防のポイントといえます。

幸いなことに、長年の研究場の結果、食べ物の中にはイニシエーターやプロモーターといった発がん物質の働きを抑える役割を持つものがあることがわかってきました。特に日本人に多いがんは、胃、大腸、食道などの消化器系のがんですから、それだけ食生活、食習慣とかかわりが深いということです。具体的に、どのような食べ物にがん予防の効果があるのか、日ごろからこれらを積極的に食事のなかにとりいれるようにして、がんの芽を本物のがんに育てないようにしたいものです。