特別な治療法例「胃がんの肝転移の治療法」

抗がん剤や放射線のほかに、肝転移を治療する方法です。
肝転移再発が孤立性な場合(肝臓にがんの転移巣が1つできる)は、治療法にいくつかの選択肢があります。大きさが2cmまでの原発巣のがんであれば、どれも手術する場合と同等の効果が報告されています。

  • 塞栓療法(TAE)
    がんにつながる血管(動脈) にスポンジの粉や金属のコイルを流して血管を詰まらせて、栄養や酸素の供給を止めてしまう方法。がん細胞を壊死させます。
  • マイクロウェーブ療法
    がん単に特殊な針を刺して、電磁波を流して焼き切ってしまう方法。
  • PEIT療法
    がん巣に直接針を刺して、100%濃度のアルコールを注入して壊死させてしまう方法。しかし、胃がんで肝臓に転移する場合は、多発性転移(肝臓にたくさんの転移山果ができる)することが多いため、これらの治療では効果が出にくく、抗がん剤を選ぶことになります。

放射線治療がおこなわれるケース「消化器系のがん治療ではどのような使い方をされていますか?」

一般的に消化器系器官のがん(胃がん、肝臓がん、結腸がん、小腸がんなど) では、放射線療法の治療効果が出にくいため、あまり用いられていません。
特に胃がんかは、放射線が効きにくい(専門的には「放射線感受性が低い」といいます) がんなのです。

また、胃がんや膵臓がんでは、照射の角度をくふうしても隣接する肝臓にもかかってしまい、ダメージが大きいため、原発巣(胃や膵臓) に放射線をかける治療法を選ぶことはありません。

ただし骨に転移したときには、痛みを軽減させるために放射線療法を取ることもあります。骨に転移すると、激痛が起こりますが、そこに放射線をかけると細胞を死滅させることができるからです。消化器系器官でも食道がんや直腸がんに関しては、放射線がよく効いて腫瘍が小さくなるという効果が明らかになっています。

「腺がん」や「扁平上皮がん」とタイプが分かれるのは、がんの発生する部位が異なるからです。食道がんでは原発巣にも転移巣にも有効ですが、直腸がんでは骨盤内で再発した場合に効果があります。
なお、「放射線治療をすると新しいがん(二次がん) ができるのではないか」とよく質問されます。確かに理論的には可能性もあり、実例も出ています。しかし、実際には極めてまれなため、放射線を治療に使うことについての問題はないと考えられています。

放射線治療がおこなわれるケース「放射線治療の効果」

放射線にはがんを殺したり、.増殖を抑えたりする働きがあります。それはがん細胞に放射線を当てると、DNAを合成する能力がなくなるため、細胞分裂ができなくなるからです。
乳がんや食道がんのように治療がうまくいけば手術をしない、もしくおんそんは手術を縮小して臓器を温存できる場合も出てきます。
しかし、がんのなかには放射しようしや線を照射しても、ダメージを受けないタイプもあります。正常な細胞は、がん細胞と比べて放射線の影響を受けにくいと考えられていますが、放射線治療医はできるだけがんの組織だけに照射できるよう、いろいろなくふうをしています。
たとえば、フィールド・イン・フィールド方式では、コンピュータで腫瘍の正確な位置を確認後、病巣部だけに照射できるよう器械を動かしながら調整します。また、子宮がんや直腸がんの場合では、体の外からではなく、体内に装置を入れて放射線をかけるという方法を取ることもあります。
これは、特殊な器具を腫や肛門から病巣部の近くまで挿入して放射線を当てます。放射線には、γ線、Ⅹ線、電子線、中性子線、陽子線、重イオン線という6種類があります。
このなかで、γ線、Ⅹ線、電子線は日本でもポピュラーな治療法ですが、中性子線、陽子線、垂イオン線は、現在国内では限られた施設でのみ治療がおこなわれています。

抗がん剤による胃がんの治療「特殊な抗がん剤の使い方」

たとえば.肝臓、肺、骨髄の再発病巣だけに抗がん剤を注入する方法(「経動脈的抗がん剤投与」)」があります。血管造影検査で腫瘍に血液が流れているのを確認でてききた場合、点滴で使うときより何十倍、何百倍の濃さの抗がん剤を病巣に向けて投与します。

血液とともに腫瘍に流し込み、ダメージを与えます。点滴(静脈投与)の抗がん剤を通常量の10倍~50倍にして使うという方法をとることもあります。
そうすると、通常より当然多くの副作用が出ますが、それでもあえて大量の抗がん剤を使うという治療です。この治療をおこなうときは、本人と家族には事前に次のような説明をします。

  1. 柄状から見て、他に治療法がないこと。
  2. 大変危険な治療法であり、重篤な副作用が考えられること
  3. ししかし、副作用の対策はじゅうぶんに検討されていること

これらの条件をきちんと踏まえて、さらに患者さんご本人の意志を尊重した後、治療として使用するかどうかを決定します。

抗がん剤による胃がんの治療 「温熱療法の効き目とは」

がん細胞は、正常細胞にくらべて熱に弱いという性質があります。また腫瘍の部分では乳酸が作られて酸性になっています。酸性の細胞は、よりいっそう熱に弱く、さらに42度以上の熱によってDN Aが修復されにくくなり、がん細胞が死にやすくなります。

この性質を利用して、がん病巣の部分を43度に温め、抗がん剤の効果を高めるのが温熱療法です。おもに腹膜播種の場合におこないます。局所温熱療法と全身温熱療法があります。胃の中に管を通して温水を注いだり、腹部を外からヒータープローブなどの加湿器で温めたりします。

抗がん剤による胃がんの治療 「ガンが小さくなれば長生きできるのか」

悪性腫瘍(がん の大きさは、予後と深いつながりがあります。完全に消えてなくなってしまったら効果があったということになり、長く生きていけるでしょう。しかし、油断はできません。

抗がん剤を中止した途端にリバウンドが起こって、急に腫癌が大きくなってしまったという例もあります。しかも、急速に大きくなっていく場合、がん組織の性質が変わり、悪性度が高くなります。

抗がん剤による胃がんの治療 期待の新薬「TS-1」について

2001年から病院で使われ始めた、新しい抗がん剤です。これまで頻繁に使っていた「5・FU」バージョンアップさせたもので、がん細胞のDNAの合成を抑制する働きがあります。

特徴は、腫瘍を小さくする働きを強めて、5・FUの副作用として悩まされていた下痢や口内炎を減らしています。が、やはり副作用があり、食欲不振、白血球減少、肝機能障害をもたらすことがわかっています。ふつう、抗がん剤の効果は奏効率(腫瘍の大きさが半分以下になった状態が4週間以上統くこと) 2、3割と言われていますが、

この薬の場合、第Ⅱ相の臨床試験の段階で、「全国で手術ができない再発・転移した胃がん患者さん1001人に投与したところ、腫瘍が半分以下になったという症例が、45人もいた。という発表が出ました。

実際、この抗がん剤を使用したおかげで胃がんの肝転移が消失するなどを経験し、その効果は確かにあるといえます。さらに、「TS-1」の特徴はスキルス胃がんにも効果があることです。

抗がん剤による胃がんの治療「胃がんによく効く抗がん剤」

胃がんで転移・再発した場合には、多発性転移が起こることが多く、切除することができなぐなります。このため、転移・再発を予防するという目的で抗がん剤を投与します。

ファーストラインには、フルオロウラシル(商品名5・FU)という、がん細胞のDNAの合成を抑制する働きの薬を選びます。

がんの再発が肝臓か肺か腹膜か予測ができないため、血液に乗って全身に回るように、経口か点滴で1日2、3回投与します。ほとんどの場合には1年間投与を続けて様子をみますが、

なかには3年間におよぶ場合もあります。この5・FUの効果が出ない場合、また明らかにがんが再発した場合には、薬の量を増やしたり別の薬に変更したりします。

セカンドラインとして、5・FUと他の薬を一緒に投与して、2種類の薬の効果を高める方法(「バイオケミカル・モジュレーション」)を取ることもあります。

たとえば5・FU+塩酸イリノテカン(商品名カンプト)、5・FU+メソトレキサート(商品名メソトレキセート)、5・FUフルオロウラシル(商品名ロイコボリン)、5・FU+CDDP(商品名シスプラチン)などの併用療法です。

しかし、これらの方法をとった場合には、副作用や合併症が重くなります。胃がんに抗がん剤の効果があるかどうかは、症例によって使用してみなければわかりません。しかし現在では、いろいろなことがDNAレベルで明らかになってきているため、将来的にはどんなタイプの遺伝子であれば抗がん剤が効くか、効かないのかが、あらかじめわかるようにもなってくるでしょう。

抗がん剤による胃がんの治療「骨髄抑制とはどのように起きる」

これは骨髄抑制という副作用のことです。骨髄は血管つくり出す臓器で、赤血球、白血球、血小板をつくっています。赤血球は肺で酸素を取り込み、全身の組織に送り込みます。
血小板が少なくなると、出血が止まりません。さらに、白血球がつくられなくなると体内を防御するシステムがダウンするため、外部から病原菌が侵入してきても除去できず、暴れ放題になってしまいます。

たとえば、抗がん剤の投与を受けている患者の体内にMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)が入ってくると、敗血症や肺炎、髄膜炎、腹膜炎になって死亡することがあります。

敗血症とは、血液中に細菌や異菌が入ってきたために発熱や意識障害、ショック症状を引き起こしてしまう病気です。この菌は健康な人にはなんの害もおよぼさないという常在菌ですが、抗がん剤の投与を受けている場合、免疫力が下がっているので重篤な状態を引き起こしてしまいます。
このため、抗がん剤を投与する場合は、白血球や血小板の減少がすぐに発見できるように、何度も検査します。白血球が極端に減っているときは、数量を増やすためむきんしっに特別な薬を投与します。
また、患者さんは無菌に入院していただき、医師や看護師、栄葦など、出入りするすべての人も無菌の衣服を着て管理する必要があります。

抗がん剤による胃がんの治療「抗がん剤の副作用が生じる理由」

がん細胞だけを選んで攻撃するように設計されていますが、正常細胞にも影響が及ぶためです。抗がん剤はがん細胞のターンオーバー(細胞の生まれ変わりの周期)に合わせて、DNAの合成を抑制するようになっています。

がん細胞は正常細胞よりターンオーバーが早いという特性があるため、がん細胞だけを何回もたたくことができるというしくみです。
ただし、何回目かのターンオーバーで正常細胞の周期と重なってしまうと、正常細胞も攻撃を受けて壊れてしまい、副作用となって症状が現れます。