ヤマイモは古くから、滋養強壮にすぐれた食べ物とされ、精力がつくことから「山ウナギ」とも呼ばれています。
東洋医学でも、ヤマイモの一種である長イモを干したものを山薬と呼び、足腰を丈夫にし、虚弱体質や眼精疲労をとる食材としてしれています。
里(村) でとれるイモに対して、山でとれるイモ、ということで、山芋という呼び名がついたようですが、原産地は中国です。
山芋の種類には、長イモ、イチョウイモなどいろいろありますが、食用されている種類は、なんと60種以上。このように、さまざまな形のヤマイモがあるわけですが、現在、日本で栽培されているのは、長イモやイチョウイモ、大和イモが大部分を占めます。
もともと山に自生する自然薯も、最近では、栽培ものがみられるようになりました。
日本でも、その効用が古くから認められ、親しまれてきたヤマイモですが、このヤマイモには、いったいどんな成分があるのでしょうか。まず、ジアスターゼとアミラーゼ。この2 つは、デンプンを分解する消化酵素で、消化、吸収を効率よく行ってくれます。
また、あの独特のヌルヌルに含まれるヌメリ成分は、ムチンといいます。ムチンとは、糖タンパクの一種ですが、これには、タンパク質の吸収を促進して、ムダなく活用する働きがあります。
また、糖とタンパクには血糖値を下げる働きもあり、糖尿病の改善にも役立つのではないか、と専門家たちの間で期待が寄せられています。
臨床実験では、特に初期の糖尿病よりも、中期から後期の体重減少があらわれ始めたものに有効だという結果が報告されています。
そのほか、新陳代謝を促すコリン、コレステロールを除去し、抗酸化作用を持つサポニン、がんや成人病の元凶となる活性酸素を解毒するカタラーゼという酵素、脳の神経物質として重要な働きを果たすカテコールアミンなど、有効な成分をたくさん含んでいます。このように、ヤマイモには、胃腸の働きを調整し、新陳代謝を高め、病気への抵抗力や回復力をつけてさらに、老化も防いでくれる成分がじつに豊富なわけです。
実際に中国では、頻尿、夜間頻尿、全身倦怠などの症状にすぐれた効きめがあるとして、漢方薬の処方にも用いられています。老人性の夜尿症を治す漢方薬として有名な「八味丸」にも、ヤマイモが配合されています。ヤマイモの代表的な料理としては、やはりトロロ汁があげられますが、これはじつに理にかなった食べ方でもあります。ヤマイモに含まれる消化酵素は、加熱するとその効果が薄れてしまうからです。
生で食べることによって、消化酵素の働きはいっそうよくなりますから、すりおろして食べるのがいちばんおすすめです。