血液成分の働きとガンのサイン

血液を腕の静脈から注射器で採り出し、ガラスの容器に入れて放置すると、ベトベトとした赤黒いものが沈んでいきます。つまり、重いから沈んでいくのであって、この中には、赤血球、白血球、血小板などの血球、つまり有形成分が含まれています。

上のほうの澄んだ部分は 血清 といい、血清とフィブリノーゲン( 繊維素原 )よりなっていますが、フィブリノーゲンは、下に沈んだ血球を固まらせる作用があり、結局は、上方の澄んだ部分は、文字通り血清であるわけです。

血清の90%は水分で、残りがタンパク、糖、脂肪、ミネラル、ビタミンなどの栄養素、それに、肝臓やすい臓などの細胞内で行われる化学反応の触媒をつかさどっている酵素、内分泌臓器でつくられたホルモン、肺から取り込まれた酸素、その他、体内60兆個の細胞の生活(代謝)の結果つくり出された老廃物などです。

こうした血球や血清の成分の多すぎ、少なすぎでもって、現代医学はさまざまな病気の診断をしています。こうした成分の多寡も、狭い意味での瘀血=汚血と考えてよいでしょう。

そこでまず、この血液の成分および、それぞれの多寡が何を意味し、どういう病気と関連しているかについて、考えてみることにします。

血球

1.赤血球数の増減がガンのサインとなることもある

肺に吸い込んだ空気の中の酸素は、肺胞の壁の中を走っている毛細血管内の赤血球がキャッチして、全身の細胞に送り届けられます。

正確には、赤血球の赤い色を出している血色素(ヘモグロビン)が、その役を果たしています。全身の細胞に酸素を送り届けた赤血球(血色素)は、細胞の代謝(生活)の結果、排泄されたCo2 (二酸化炭素)と結合して肺まで運び、肺から呼気として排泄させているわけです。

貧血とは、赤血球が少ない状態を指すのですが、換言すれば、酸素を運ぶトラックの数が少ないわけですから、貧血になると、全身の組織、細胞に十分な酸素が供給されないため、手足の冷え、しびれ、脳貧血などの症状がおこるわけです。
貧血の予防と治療

少ない台数のトラックを、スピードを速くして仕事を遂行しようとする結果、心臓は速く動いて、頻脈、動悸などの症状がおこるわけです。貧血は、厳密にいえば次のように分類されます。

低色素系貧血

赤血球の数は正常(男性:430~570万、女性 370~500万)でも1個1個の赤血球がうすい状態をいい、血色素(男性:13.5~17.5g女性:11.3~13.2g)の主要成分である鉄が不足しておこる貧血です。

鉄欠乏性貧血ともいわれます。たとえば、赤血球数500万個、血色素9.0のような場合で、「貧血」の70~80%はこのタイプです。

食事からの鉄の摂取不足、胃腸の病気または、吸収力低下のための鉄の吸収障害なども原因となりますが、中年以降で、鉄欠乏性貧血が存在するときは、胃・十二指腸潰瘍、痔、子宮筋腫などからの出血がいちばん疑われます。

まず、そうした基礎疾患の発見が必要ですが、食事は、鉄分の多い食物=色の濃い食物、っまり浅草のり、小豆・黒豆、ホウレンソウ、黒ゴマ、プルーン、魚の血合肉 などをしっかり食べる必要があります。

高色素系貧血

赤血球数は少ないのに、血液中の血色素の量は正常に存在するので1個1個の赤血球の色素は濃くなっているという状態です。

つまり、赤血球数350万個、血色素14.0というような場合です。この夕イブは、ビタミンB12や葉酸の摂取不足によっておこる悪性貧血や、飲酒過多による貧血のときに見られます。

正色素系貧血

たとえば、赤血球数350 万、血色色素9.0というような場合です。溶血性貧血、再生不良性貧血など、めったにお目にかかれない貧血もこのタイプですが、ガンが進んでくると、この正色素性貧血になることが多くなります。

ほかに何の自覚症状、他覚症状がなくても、検査上、正色素性貧血が存在するだけで、ガンを発見できることがときどきあります。

すべての病気で、それが長引いたり、重篤化してくると貧血傾向になりますので、貧血がある人は、種々の精密検査を受ける必要があります。

貧血とは逆に、赤血球が600万以上、血色素が18以上の場合を多血症といいます。これは、脱水状態(下痢、利尿剤の服用のしすぎなど)でもおこりますが、骨髄での造血が異常になり、赤血球だけでなく、白血球や血小板などほかの血球も同時に増加する場合を真性多血症といい、将来、白血病などに移行することもあるので要注意です。

また、慢性の肺疾患や心臓弁膜症などで体内への酸素の取り込みが不足すると、生体では酸素の運び屋である赤血球を増加させて酸素不足を補おうとするメカニズムが働きます。
これを症候性多血症といい、ヘビースモーカーの人や、高山に登った時などにも見られます。

2.免疫作用の先兵、ガンにも活躍する

白血球というと、ばい菌を食ってくれる細胞というイメージが一般の方々にはありますが、好中球、リンパ球、単球、好酸球、好塩基球と大きく5つに分類され、リンパ球はさらに、その働きによっていくつかに分類されます。

好中球
白血球中、いちばん多い細胞で、これこそ、病原菌の貧食・殺菌をはじめ、体内の老廃物の貧食処理をしてくれる、免疫作用の先兵のような白血球です。好中球1個でだいたい、病原菌を14~15個、貧食するとされていますが、肥満した人、力は、低下しています。好中球も栄養過剰の満腹状態にあり、い、というところでしようか。
リンパ球
  • B細胞
    骨髄でつくられている細胞という意味で、いわゆる抗体(免疫グロブリン) を産生します。1回ハシカにかかると2 回はかからないというのは、侵入したハシカウイルスに対して、このB細胞が抗体をつくり、2回目のハシカウィルス(抗原)の侵入時には、抗体が抗原をやっつける(抗原・抗体反応)ことによって、ハシカの発症を抑になえるわけです。
    はしかはこちら。
    こうしたB細胞が担っている免疫現象を液性免疫といいます。
  • T細胞
    胸腺でつくられるリンパ球で、ガン細胞をはじめ人体にとって異物となる有害物を直接破壊する作用があるので、T細胞の働きは細胞性免疫と呼ばれます。また、B細胞の働きを助けるという作用もあります。
  • T細胞
  • NK細胞・K細胞など
    ガン細胞の自然の殺し屋という意味で誰の体内でも常に発生しているガン細胞を殺して、人体がガンという病気にならないように、頑張ってくれている細胞です。

単球(マクロファージ)
白血球中、最も大きいのでマクロファージと呼ばれ、血管外に進出して細菌や結核菌、真菌(カビ)などを貧食する働きがあります。また、マクロフア⊥ ソ活性因子(インターフェロンなど) によりTNFを分泌してガン細胞を破壊する作用もあります。
好酸菌
アレルギー発症を抑制するように働いている白血球です。ハウス・ダスト、スギ花粉、ダニ、牛乳などのアレルゲン(抗原)と抗体が結びついた抗原・抗体複合物は、肥満細胞(マストセル)を刺激してヒスタミンを分泌させて、ぜんそく、鼻炎、アトピー、じんましんなどのアレルギー現象を誘発しますが、この抗原・抗体複合物を処理して、アレルギーを防いでくれるのが、好酸球というわけです。
好塩基球
顕微鏡で、白血球を100個数えても1個存在するかしないかというほど少ない細胞なので、あまり研究がなされていないというのが実情です。
しかし、好塩基球内には、ヘパリンを含み、このヘパリンは抗脂血・抗凝固作用を有しているので、この好塩基球こそ、高脂血症や血栓症を予防・治療してくれる白血球ということができます。

こうして、白血球の働きをながめてみると、炎症だけでなく、ガン(腫瘍)、アレルギー疾患、循環器疾患、脳血栓、心筋梗塞などの万病の予防、治癒促進に活躍していることがわかります。

白血球こそ免疫 現象の主役を担っている細胞だということが理解できるでしょう。発熱、入浴、運動などで、体温が上昇すると、白血球の働きが促進されることは種々の研究でつきとめられています。

よって、ほとんどの病気で発熱するのは、この白血球の働きを高め、病気の治癒を促進させるためのメカニズムであると考えられます。

白血球が、正常範囲の4000~8000を超えて、1万個以上になるときは、ほとんどの場合、好中球数の増加が原因です。そのほとんどが、細菌感染症(肺炎、気管支炎、扁桃腺炎など)によりますが、ほかに、肉体的ストレス(痛み、運動、寒冷・暑熱)や精神的ストレスでも増加します。また、ヘビースモーカーの人も血液や体内に有毒物が多くなるので、その掃除のために、好中球(白血球)が増加することがあります。

また、アレルギー性疾患で、好酸球が増加し、そのため、白血球増多を見ることもあります。頻度的には稀ですが、成熟していない、幼若白血球の増加のために、白血球が増加する状態が、血液のガンともいわれる白血病です。

白血球減少(3000以下)の原因もほとんどが好中球の減少で、再生不良性貧血や白血病などの血液疾患や、化学薬品(抗ガン剤、抗生物質、鎮痛・解熱剤、抗甲状腺剤など)で、造血臓器が障害されて好中球が減少することがほとんどです。

また、古くなった白血球は主に牌臓で破壊されるので、肝硬変など牌腫を伴う病気では白血球減少が見られます。白血病では、主に白血球が増加しますが、白血球減少という形で現われてくることもあるので要注意です。

3.さまざまな症例の指標になる血小板

血小板が多すぎる血小板増多症では、血管内で血液が凝固して脳血栓や心筋梗塞をおこしやすくなります。多血症や白血病など、骨髄での血小板の増血過多をおこす病気で血小板増加が見られますが、その他、高脂血症、高タンパク血症、高尿酸血症、高血糖など、過食・運動不足による栄養過剰状態で、血小板が増加し、血管内で血栓をおこしやすくなる傾向があります。

反対に、血小板が少なすぎる血小板減少症では、出血傾向が出てきます。再生不良性貧血や白血病など骨髄の造血障害、血小板減少性紫斑病などの免疫異常、化学薬品による副作用で血小板は減少します。

血清

血清の90%以上が水分で、ほかにも種々の成分が含まれています。

たんぱく質
タンパク質の多寡は、体の栄養状態を表わし、正常範囲の6.5~8.0以下であると、もちろん、栄養低下(失調)が存在することを物語っています。

飢餓をはじめ、ガン、慢性の感染症や炎症など、どんな病気も長引くと、低タンパク血症(6.4以下)になることが多いのですが、もし、8.1以上のタンパクが血中に存在しても、即、栄養状態が良好すぎる、つまり、栄養過剰状態(肥満、肉食過多など) とはいえないのです。

なぜなら、タンパク質は、総タンパクといわれるように、肝臓でつくられ、全身の細胞に栄養素として送り込まれるアルブミンと、体内に炎症(感染症など)、ガンなど病気が発生したとき、それをやっつけるために、リンパ球のB細胞でつくられるグロブリンの2種類があるからです。

健康状態では、アルブミンは、総タンパクの約3分の2を、グロブリンは約3分の1 を占めています。

しかし、何らかの病気があると、病気と闘うためのグロブリンが多くつくられるので、A/G比の値は下がりますし、肝臓ガンをはじめ、肝炎、肝硬変など肝臓病では肝臓でのアルブミンの合成が低下し、A/G比が低下します。A/G比は、体内にどんな病気があっても低下しますし、その値が低いほど、病気が重篤だということを表わしています。A/G比の正常範囲は1.6~.3くらいですが、ガンなど極端に病気が進んでいきますと、0.5以下に下がることさえあります。

私たちが筋肉を動かしたり、脳を使ったりするためのいちばん重要な栄養素が糖です。脳は、その活動の栄養源として、ほぼ100%を糖に依存していますので、60~110mg/dlの正常の血糖値からかなり低くなった低血糖状態では、ふるえ、けいれん、脱力、失神などの脳神経症状を呈してくるわけです。

しかし「過ぎたるは及ばざるが如し」で、過食、運動不足で、血液中の糖分が多すぎる高血糖状態になると、種々の障害が出現します。

糖分は、ばい菌の好餌になるので、肺炎、膀胱炎、皮、ふ炎(かゆみ)、結核などの感染症にかかりやすくなりますし、高血糖は血管壁を傷害するので、網膜症(失明)、腎症(腎不全)、末梢神経炎などにかかりやすくなるわけです。

つまり、網膜や腎臓、神経を養っている血管が高血糖のためにボロボロになるからです。最終的には血液中に糖がだぶつく(高血糖)ばかりで、体内の60兆個の細胞に、栄養素としての糖分が供給されないので、だるさや、食べても食べてもやせてくる、という糖尿病特有の症状が出てくるわけです。

脂肪
糖であれ、脂肪であれ、タンパク質であれ、力ロリ- 源を食べすぎて、運動・労働などで消費しないと、中性脂肪として、体内にたくわえられます。それが、肥満であり、肝臓の細胞内にたくわえられると、脂肪肝ということになります。
コレステロールは、男性ホルモン、女性ホルモンの成分や、消化液である胆汁の成分、また、細胞膜の構成材料ですから、少ないほどよいというものでもありません。

よって、正常 120~220mg/dl以下の低コレステロール血症の人は、血管壁がもろくなり、脳出血をおこしやすいとされています。
もちろん、多すぎは、高脂血症→動脈硬化→脳血栓、心筋梗塞の主因になることは、周知の通りです。

なお、HDLコレステロールは、善玉コレステロールともいわれ、動脈硬化の予防・治療に役立っており、多いほど、動脈硬化の病気になりにくいことを意味します。

ミネラル
ミネラルは、鉱物という意味で、簡単にいうと「土の中の成分」といぅことです。つまり「人間は死ねば土に還る」といわれるのは、このミネラル分が土に還るわけです。

すなわち、体内に含まれるタンパク質、脂肪、糖などの有機物質は、死体が腐乱したり、火葬されたりすると、すべて、C O2( 二酸化炭素) やH2O(水)その他の気体に変化し霧消します。しかし、鉄、亜鉛、カルシウム、マンガン、マグネシウム、銅、カリウム…などのミネラル分は、腐ったり、燃えたりしないで残るわけです。

火葬場で残っている骨や灰こそミネラルです。金属物質だから燃えないわけですし、ミネラルを別名、栄養学の要語で「灰分」という所以でもあります。

ビタミン
ビタミン< は、ラテン語で「生命」という意味です。つまり、微量で生命現象に深くかかわっている物質(栄養素) で、不足すると種々の病気がおこってくるわけです。
酵素
肝臓、すい臓、筋肉など、体内の種々の臓器の細胞内では、いろいろな物質が合成されたり分解されたり、破壊されたりと、物質代謝、新陳代謝が行われています。
こうした化学反応をスムーズに行わせるための触媒的働きをしているのが、酵素なのです。最近の、血液検査による診断の主役は、この酵素といってもよいくらいです。この酵素の多寡で、臓器の病気の診断ができるわけです。主に、肝細胞内にはGOT、GPT、LDH、ALP、LAP、γ-GTPなどの酵素が含まれておりますが、古くなった肝細胞は毎日、自然に壊れているので、その壊れた肝細胞内よりこうした酵素が血液に吸収され、腎臓より排泄されていきます。
よって、血液をとって調べると、こうした酵素は誰にでも、ある程度含まれているわけですが、平均値を超えて過剰に含まれていると、それを含んでいる肝細胞が傷害され、破壊されたということを意味するわけです。
コリンエステラーゼ
コリンエステラーゼは、アルブミンと同様に、肝臓で合成されるので肝細胞の力(機能)を見る指標になります。
アミラーゼ
炭水化物を分解する酵素で、すい臓やだ液腺の細胞に含まれているので、すい炎、すい臓ガンをはじめ、だ液腺の病気で上昇してきます。
CPK
筋肉細胞内に含まれている酵素なので、筋肉の病気(重症筋無力症など)や心筋梗塞で血液中の値が増加してきます。
ホルモン
「ホルモン」は「興奮させる」「呼びさます」というギリシア語に由来しています。「内分泌臓器でつくられて、血液中に分泌される物質で、ごく微量で、ほかの組織、臓器の働きを調節する」という作用があります。
男性ホルモンは、男にヒゲを生えさせ、筋肉や骨格を発達させるし、女性ホルモンは、でん色白で、柔らかい皮ふをつくり、乳腺や腎部に脂肪を蓄積させて女性らしさをつくる、というように、微量ですごい働きをしているわけです。
老廃物(BUN、クレアチニン、尿酸)
BUN尿素チッ素)、クレアチニンともに、体内でエネルギーとして使われたタンパク質の燃えカスです。尿酸は、細胞の核の核酸の成分であるプリン体の最終代謝産物で、細胞核の崩壊によって産生されます。よって、BUN、クレアチニン、尿酸は簡単にいえば、体内の老廃物で、当然腎臓が作りだす尿として排泄されるべきものですが、血液検査で正常値以上存在するときは腎臓の働きが悪いとう診断がつくのです。
非常在タンパク
健常者の血液中には、ふつうは存在しないか、あってもごくわずかしかないタンパク質を非常在タンパクといいます。非常在タンパクには、その量の変化が肺炎やリウマチなど、炎症性疾患のサインとなるCPRなど各種あります。ガンには欠かせない腫瘍マーカーについてです。正常な健康細胞からは産生されず、ガン細胞かからだけつくり出される非常在タンパクを腫瘍マーカーといい、ガンの存在やガンの再発・転移を診断する参考になります。
しかし、腫瘍マーカーは、ガンがある大きさ以上にならないと血液中に出現しないことも多く、また、たとえ出現しても、ほかの良性疾患から産生されることもあるし、腫瘍マーカーが陰性でも、ガンが存在しないという保証はないので、現段階では100% 確実な診断法とはいえません。
ただし、治療前に陽性であった腫癌マーカーが、治療(手術、放射線、抗ガン剤) により陰性化し、それが再び陽性化してくると、X線検査やCT検査、超音波、MRIなどで発見される前にガンの再発・転移が、早期にわかることが多いものです。主な腫瘍マーカーに次のようなものがあります。

  • AFP(αフエトプロテイン)
    原発性肝ガンの約80~90% で陽性、睾丸腫瘍でも出現
  • CEA
    胃・肺・乳・膵臓・大腸ガンで陽性。ただし、糖尿病、肝炎、肝硬変、慢性すい炎、慢性気管支炎、ヘビースモーカーで陽性になることもある。
  • CA19-9
    すい臓ガンの80~90%で陽性
  • PAP(前立腺酸性フォスファターゼ)
    前立腺ガンの約65%で陽性

血沈

血液に抗凝固剤を加えて固まらないようにし、目盛りのついた細いガラス管に入れて垂直にたてるときますが、この速度を血球(主に赤血球)が時間とともに沈んでいきますがこの速度を血沈といいます。

健康な男性で、この赤血球が沈んでいく速度(距離) は10mm以内ですが、何か病気があると、必ず、それ以上の速度で沈んでいきます。

これを血沈の凡進といいます。つまり、急性の炎症でフィブリノーゲンやCRPなどの非常在タンパクが増加しても、また、慢性の病気でγグロブリン(免疫グロブリン)が増加しても血沈は凡進します。また、貧血で赤血球が減少したり、栄養失調やガン、長期の慢性疾患などによる栄養低下(アルブミンの減少)でも凡進します。つまり、血沈はA/G比と同様、どこに病気があるかわからないが、健康か病気かを判別するのには大変貴重な検査なのです。とくに、血沈が50mm以上の場合、自覚症状がなくても、必ず病気にかかっているといってよく、その場合、精密検査が必要です。

AFPの原発性肝ガン、CA19-9のすい臓ガンなど、非常在タンパクの出現、即ガンの診断とされるものはむしろ少なく、血液検査だけから、ガンを診断するのは、なかなか難しいものです。

ガンは発病してから臨床症状が出るまで川10~30年もかかる、超慢性病ですから、まず、貧血が潜在していることが多いようです。

正色素性貧血が存在すると、一応、ガンを疑って精査する必要があります。ガン細胞は、どんどん増殖していくので、ガン細胞の代謝に酸素をかなり必要とするので、どうしてもガン組織の中では酸素不足になりがちになります。

そこで、乳酸が多量に発生します。よって、乳酸を処理するための酵素であるトLDHが上昇してきます。LDHは200~450くらいが正常ですが、これが1000や2000になっていたら、ガンを疑ってかかる必要があります。

また、超慢性病ゆえに栄養失調、つまり肝臓でのアルブミン合成の低下、Bリンパ球でのグロブリン産生の増加によるA/ G比(1.2~2.4が正常)の低下、さらには貧血などすべての不健康因子の出現による血沈の凡進などが、ガンを推測する目安になります。

  1. 貧血(正色素性貧血)
  2. 」LDHの異常高値
  3. A/ G比の低下
  4. 血沈凡進

などが一般検査よりガンを推測する手段ですが、これに、腫瘍マーカーの出現が加わると、ほぼ確実になります。

寿命を左右する検査値の読み方

現代医学の血液検査の意義および、諸検査値の意味するところがおわかりいただけたと思います。

血球や各種の酵素の多寡(この場合、多すぎ)、腫瘍マーカーの出現等も、正常な血液に比べて異なっているので、「血液の汚れ」とも考えることができます。しかし、こうした現代医学的な血液の成分に異常がなくても、漢方でいう瘀血=汚血が存在すること