がん細胞が増殖していく本当の理由

人体は約60兆個の細胞で構成されていますが、もとはといえば、すべての細胞は、母親の卵子1個と父親の精子1個が合わさってできた受精卵から出発しています。

受精卵は何回か分裂をくり返しているうちに、種々の細胞塊をつくり、異なった形をとり始めます。それは細胞の機能が特殊化して、脳細胞、皮膚細胞、肝細胞、子宮の細胞……などに分かれていくということであり、これを「分化」といいます。

「分化」は質的な変化をいいますが、それぞれの細胞が分裂して、どんどんその数と量を増していく現象は「成長」と呼ばれます。

ガンは英語でCanser(キャンサー)ドイツ語でKrebs( クレブス)といいますが、いずれもギリシア語のKarkins(カニ)が語源です。

ギリシアの医学者ガレノス( 131~203 年)によるとている血管の様子が、カニの足に似ているので、この名がつけられたとのことです。

日本語の「癌」の語源は、やまいだれにいわお、つまり、岩のように硬い病気ということです。

よって、肉眼的形態学的にガンを表現すると、「その周囲に血管が多く、血液の供給がま豊富な岩のように硬い瞳れ物」顕微鏡的( ミクロレベルの)ということになります。ガン細胞の特徴は、

  1. 細胞の中の核が大きい
  2. 核小体がほっきりしている
  3. 胞分裂像が多く見られる
  4. それぞれのガン細胞は大小不同

などであり、ひとことでいえば、ガン細胞は「若い」ということなのです。成熟した正常細胞がガン細胞に変化していくのだから、ガン細胞とは「若返った細胞」であり、細胞の幼君化によりガン細胞がつくられる、ということになるのです。

細胞の「分化」とは逆、つまり、「脱分化」の現象ともいえます。よって細胞の「先祖返り」と表現する学者もいるのです。

白血病は、骨髄球や前骨髄球が、異常に増殖する病気ですが、白血球本来の殺菌能力がないため、白血病の患者は、細菌の侵入を防ぎきれず肺炎や敗血症などの重篤な感染症で生命を落とすことが多いのです。

また、骨髄でこうした幼若球が異常増殖すると、赤血球や血小板などの造血作用を抑制したり、造血の場所すら奪ってしまうので、赤血球減少(貧血)、血小板減少(出血)という症状を伴ってくるのが、白血病なのです。

肝臓ガンにしても胃ガンにしても、役立たずの幼若な肝細胞や胃の細胞が異常増殖し、解毒やタンパク合成をする正常の肝細胞や、消化作用を有する胃の正常細胞の働きを阻害し、その生存場所も奪い、肝臓や胃の働きをストップさせてしまうというわけです。

そのうえガン細胞は、大きくなりすぎて近隣の臓器につきあたっても、どんどん増殖し、やがて、その臓器にも転移してガン腫をつくったり、血液やリンパ液に乗ってさらに遠くの臓器にも転移していく、という特徴があります。

このように、体の規則や命令を無視し、自分勝手に増殖・転移していく現象を「自律性」と呼び、「細胞の幼若化」=「脱分化」とともにガン細胞の特性でもあるのです。

ガンは、全身病であり、全身の血の汚れが原因と主張してきましたが、もちろん、局所的な要因が加味されて、その局所に発ガンしてきます。

たとえば、タバコや大気汚染が肺ガンを、食物中のニトロソアシンが胃ガンを、高脂肪食により胆汁の分泌過多がおこり、それが腸内細菌により代謝されてできるデビドロコール酸が便秘により大腸に慢性的に作用して大腸ガンをというわけです。

しかし、いくら局所的な発ガン要因が加わっても、全身の血の汚れが存在しない人ほ、発ガンしてこないことも考えられます。
こうした血液を汚す発ガン物質の刺激を受けた局所の細胞ほ、その数を増やして発ガン物質を処理し、何とか浄血しようとしている様子が、ガン細胞の増殖であると、自然医学的には考えられます。その結果、少しでも早く細胞をつくり出そうとして、成熟していない幼君な細胞をどんどんつくると考えてよいのでほないでしょうか。