これだけある療法から抜け落ちているもの

現代医学は、ガンを「人頼最大の仇敵」「悪魔の細胞」ととらえているために、手術しててガン腫を切り取ってしまうことを根治手術と考えています。

手術が不可能な場合、放射線や抗ガン剤で抹消することに腐心する、というのが、一般的です。ほかに、比較的体にダメージを与えない方法として免疫療法、ホルモン療法や温熱療法があります。

最新の治療法として、遺伝子治療や血管再生を抑制して、ガンの増殖を阻止しようとする分子レベルでのガン治療も研究が進んできています。

外科(手術)療法
ガン腫だけでなく、周辺のリソパ節や組織を摘険してしまうことが多く、種々のマイナス面が生ずることがあります。

  • ガン細胞を周辺にまき散らす可能性
  • 手術によって体に負担がかかり、その結果免疫力が低下し、逆ににガソを増殖させる可能性
  • ガン周囲のリンパ節、筋肉、他臓器の一部を切除することもあり、機能障害をおこすなどです。

たとえば、胃ガンのため胃を全摘すると、食物が急速に小腸まで達するためにおこるダンピング症候群(吐気、脱力感、動悸、めまい)や貧血(鉄やビタミンB12の吸収障害による)がよくおこります。
乳ガンの手術では、乳房のほか、大胸筋、小胸筋、腋下のリンパ節を切除することが多いため、腕の挙上ができなくなったり、リンパ液の流れが悪くなり、腕がむくんで痛んできたりすることがあります。このように、転移や肉眼的に見えないガン細胞の拡がりを心配し、「念入り」な手術がなされても、ガンの再発や転移は、おこることのほうが多く、「根治」療法のはずの手術が、その意味をなさないことがままある、というのもいなめない事実です。

放射線治療
放射線療法は、細胞の遺伝子(DNA)に損傷を与えてガン細胞を直接殺すか、アポトーシス(細胞の自殺)を誘導したり、細胞分裂を妨げ、ガン細胞の発育、増殖を抑える治療法です。
手術と違い、ガン組織の周囲の組織や器官の働きを保存できますが、放射線が照射された部分の正常細胞も多かれ少なかれ殺傷される欠点があります。
ただし、ガン細胞のほうが正常細胞より放射線による損傷が強いこと、正常細胞ほ損傷を受けた後の復元力が強いこと、この差をうまく利用して放射線療法がなされているのです。
放射線療乾の長所としては、高齢や体力がなく手術に耐えられない患者にもできること、また、肉眼では見えないガン腫の周辺のガン細胞にもダメージを与えることなどがあげられています。
しかし、手術のように、ガン腫そのものを摘出することはできず、ガン細胞を全滅できないことも多いし、何といってもあちこちにガンが転移している場合は、放射線療法はあまり意味がありません。
化学療法(抗ガン剤)
薬物でガン細胞を殺してしまおうという療法。「肺炎や胆のう炎などの病原菌を抗生物質で殺して治療する」という発想と同じで、ガンを人体にとりついた寄生体であると見ている療法です。

白血病、悪性リンパ腫、睾丸腫瘍、絨毛ガンに対しては、かなり効果がありますが、乳ガン、肺ガン、大腸ガン、前立腺ガン、卵巣ガン、子宮体ガンなどの治療には、化学療法単独では、とうてい無理である、というのが、一般論です。
胃、肝臓、すい臓、腎臓、食道、膀胱、肺などのガンに対しては、手術不能の例や、手術後の転移の予防や再発例に用いられることもありますが、その効果は限られている、といってもよいでしょう。
抗ガン剤の作用機序には、

  • ガン細胞のDNA(遺伝子)の合成を抑えるもの
  • ガン細胞の分裂・増殖を抑えるもの
  • ガン細胞を直接死滅させるもの

などがあり、それぞれの「長所」を組み合わせて「多剤併用療法」が行われています。しかし、抗ガン作用の強力な薬剤は、副作用も強い、つまり、正常細胞へのダメージも強いという傾向があるのは事実です。

注射にしろ、経口内服薬にしろ、抗ガン剤は血流に乗って全身の細胞に行きわたり、種々の臓器障害をおこしてきます。食欲不振、吐気、下痢などの消化器障害にほじまり、肝障害、心筋障害、神経障害など体の全臓器に機能的、器質的障害をもたらし、最終的には造血障害をおこして、白血球減少、血小板減少をおこして、抗ガン剤の副作用のために生命を落とすことも少なくありません。こうした全身の細胞への悪影響を最小限にとどめるため、ガンの種類によっては、ガン腫の存在する局所にのみ、抗ガン剤を送り込む方法があります。

集学的治療法
手術、放射線療法、化学療法の「長所」を取り入れて、うまく組み合わせて、延命率を上げようという治療法をいいます。

たとえば、これまで全摘が主流だった乳ガンの手術において、ガン腫とその周囲を少し切り取り、放射線を照射して、化学療法も併用すると治療率が上昇するとか、食道ガンにおいても、放射線療法単独よりも、化学療法を併用するほうが、再発率が少ない…などというものです。

免疫療法
免疫とは文字通り、疫(病気)を免れるための現象です。広くいえば、マツ毛や鼻毛が目や鼻にホコリが入るのを防いでいるのも免疫ですし、涙や鼻汁が塩からいのも、塩分で殺菌するためであり、胃液が酸っばいのも、その強酸で食物の中に混入してくる病原菌を殺すための免疫現象です。

しかし、一般にいわれる「免疫現象」は血液中の白血球による病気から身を守る反応のことをいいます。
白血球の中のマクロファージ、T細胞、NK細胞、キラー細胞…などはガン細胞をやっっけてくれることがわかっています。こうした免疫担当細胞を賦括させて、ガンを治療しようとする試みが、ガンの免疫療法です。

リンパ球のT細胞やマクロファージなどの免疫担当細胞の助けを借りて、ガン細胞を攻撃するという治療法、つまりガンワクチンによる治療法に今、期待が集まっています。

T細胞より分泌され、ガン細胞をやっつけるNK細胞やK細胞を増殖させたり、その働きを強めてくれるインターロイキン-2(IL-2)による免疫療法や、米国のオールド博士が発見したTNFなどがそれです。TNFは、ウサギやネズミのマクロファージよりつくられ、ガン細胞のみを殺し、正常細胞を傷つけず、ヒトに投与しても効果があるという糖タンパク質であることがわかっています。

ホルモン療法
乳ガン、卵巣ガン、子宮内膜ガンの発生には女性ホルモン過剰が、前立腺ガンには男性ホルモン過剰がそれぞれ深く関係しているとされています。

よって乳ガンに対しては男性ホルモン剤のメピチオスタンを投与したり、前立腺ガンに対しては、女性ホルモン剤のエステリオールを処方する、というのが、ホルモン療法です。

蛇足ですが、高脂肪食、とくに、コレステロールの多い食物を食べすぎると、それが卵巣で女性ホルモンの、また、睾丸で男性ホルモンの産生を過剰にし、女性ホルモン過剰→乳・子宮体・卵巣ガンを、男性ホルモン過剰→前立腺ガンをつくってくるとされています。

温存療法
イタリアのボンティンという沼の周辺の住民が、ほとんどガンに羅患しないことを不思議に思ったイタリアの医学界が、種々調査を重ねた結論が、「ンティン沼に棲むマラリアを媒介する蚊によるマラリア感染( 発熱)がガンを予防していた」というものでした。1866年ドイツのプッシュ医博は「丹毒やその他の高熱をともなう病気にかかるとガンが治る患者がいる」ことを論文にしています。

米国のコーリー博士も、「発熱とガンの治療」に関する医学文献を渉猟し、手術不能のガン患者で、丹毒に感染した38人中20人が完全治癒した事実を発見しています。また、甲状腺ホルモンの分泌過多でおこるバセドゥ病の患者にほ、はとんどガンが発生しないというのも、「発熱」が関与していると思われます。
こうした史実より、ガン細胞は発熱に弱いということが類推できますが、昭和53年に国立予防衛生研究所より「人間の子宮ガン細胞を取り出し、32度から43度の間で温度変化を与えて正常細胞と比較してみると、39.6度以上にした場合、ガン細胞は10日くらいで全滅したが、正常細胞ほ痛手を受けなかった」という実験結果が発表されました。こうした研究や実例から、「発熱とガン退縮」の研究もどんどん進められ、昭和59年1月19日に、京都で第1 回温熱療法学会が開かれました。今日、自然療法に近い「温熱療法」への期待は、ますます高まりつつあります。温熱療法の効果の論拠として、

  • ガン細胞のタンパク質は正常細胞のタンパク質より熱に弱い。しかもガン細胞は正常細胞より1.5度から2度高温である。正常細胞は42度以下ならダメージを受けないので、ガン細胞を43度 に温めると、正常細胞は41~41.5度となり、治療が可能となる
  • ガン組織には相対的に血管が少なく、そのため血流も少ない。体温を上昇させた場合、ガン細胞にはたくさんの酸素が必要なのにもかかわらず、十分に供給できず、酸欠のため、ガン細胞は死滅する。

などが考えられています。現在、種々のガンに対して、温熱療法単独が約5% 、放射線療法との併用が約50% 、化学療法との併用が約20%です。温熱療法は、全身温熱療法と局所温熱療法があり、前者は体外循環装置によって血液を取り出して加熱し、体内に戻してやる方法で、後者は皮ふガンや乳ガンなど表在性のガンに用いられ、文字通り局所を温熱で温める方法です。
温熱療法は、脳腫瘍、頭頸部ガン、乳ガン、肺ガン、食道ガン、肝臓ガン、すい臓ガン、胃ガン、腎臓ガン、子宮ガン、皮ふガン、骨肉腫などかなりの種類のガンに応用されています。

分子レベルでの最新の治療法
次のようなものがあります。

  • ガン細胞への栄養血管の新生の抑制
  • ガン細胞を分化させる
  • 遺伝子治療

詳細は省きますが、現代医学の最前線でさまざまな試みが研究・開発されています。このように、新しい治療法も含めて種々の方法が考案、開発されていますが、比較的「自然療法」に近い温熱療法以外は、正鵠を射ていないのではないでしょうか。

これだけの研究がなされながら、総合的に見て、ガン死を減らすことも、ガンの発生を減少させることもできない現実が、何よりの証左です。

正常細胞もいっしょに破壊する放射線療法や化学療法、臓器欠損の後遺症がおこるうらみのある手術療法に比べ、免疫療法や遺伝子療法などの新しい治療法は、生体にダメージを与えない、理論的には理想的な方法のようではあります。

しかし、こうした非侵襲的な治療法も、ガン細胞を悪魔の細胞という立場から見ていることには変わりはないわけです。ガン細胞を血液浄化の細胞と見るガン性善説からすると、免疫療法であれ、遺伝子療法であれ、血管新生を抑制する治療であれ、体の健康を守るために存在するガン細胞を消滅させるような方法は、逆療法ということになるのです。

自分自宅で出来るガン検査