イワシのDHAはDHAにはがんの芽を摘む効果あり

春からが旬の脂が乗ったイワシは、焼いても煮てもおいしいものです。また、値段も安く庶民的です。あの脂にDHAが合まれるのがドコサヘキサエン酸で、頭がよくなる成分として注目を集め話題になったこともありました。

最近の研究では、大腸、結腸、肺、肝臓、前立腺、乳腺などの消化器系と生殖器のがん予防と、転移を防ぐこともわかってきました。意外にも胃がんにはあまり効かないようです。DHAが胃にとどまる時間が短いことが、理由です。

DHA含有量が多いのは、海産魚のなかでも特に青背の魚といわれるイワシ、アジ、サバ、マグロなどです。白身の魚にはあまり含まれていません。いわゆる青魚に多い油です。

また、目の後ろの脂肪に多く含まれているため、まるごと1尾食べられるイワシは最適な食材といえます。DHAががんを抑制するメカニズムはかなり確認されています。
ひとつは、植物性脂肪のリノール酸です。ひところ「体にいい」と盛んにもてはやされましたが、じつは、これががん発生に関与しているのです。リノール酸は体内に入ると、γリノレン酸→アラキドン酸へと変化し、最終的には、プロスタグランディンE2という発がんプロモーターになってしまいます。

アラキドン酸酸が変化する際にはいくつかの酵素が作用しますが、DHAAはこれらの酵素を抑制し、プロスタグランディンE2をつくらないように働くのです。リノール酸そのものは体に必要な物質ですが、大豆や米など植物性食品のほとんどに含まれるため、どうしても過剰摂取になりがちです。また、肉類にはアラキドン酸が含まれているので、肉を頻繁に食べる人はがんになる危険性が高いといわぎるをえません。
ですから、リノール酸の摂取量を極力控え、肉のかわりに魚を食べる回数をふやせば、発がんプロモーターのプロスタグランディンE2ができにくくなって、がんが予防できるというわけです。

イワシは、生食が最適で、正常な細胞は50回くらい分裂するとそれ以上分裂せず、細胞がみずから死にます。これを専門的には「アポトーシス」といいます。それに対してがん細胞は狂っており、アポトーシスを忘れて無限に分裂するのですが、DHAには、がん細胞にこのアポトーシスを思い出させる作用があるようだ…ということが、大学の研究でわかってきました。

発がん・プロモーターをつくりにくくしたり、異常細胞の増殖を止めることができれば、がんの発症時期はそれだけ遅れます。魚や野菜を食べる、調理法を工夫して揚げ物でなく煮物にするなど、食生活を改善することで、発症時期を5年、10年と先にずらすことが十分に可能です。
数々の疫学調査や実験から推測すると、1日1~2gのDHAを摂取するとがん予防に効果があると考えられます。イワシなら1日2尾。参考までに、アジなら1尾、マグロの中トロ4~5切れに相当します。
1週間で計21回の食事のうち、5回は魚を食べるようにするといいでしょう。

次に調理方法の注意です。DHAを損失せず10%とれるのは生の刺し身。煮たり焼いたりすると80%に落ちますが、煮汁に出た分は飲めばいいでしょう。ただし、味つけは薄くすること。また、焼きすぎると脂が抜けてDHAが失われるうえ、焼けコゲが発がん物質になるので気をつけてください。フライは50 ~60 %DHAを損失し、逆に揚げ油のリノール酸を魚が吸収するので、あまりおすすめではありません。
日本人にはかつて、大腸がんや肺がんはあまり見られませんでした。しかし、今日、食生活の欧米化が進んだことで、これらはふえてきました。がん予防を考えるなら、魚や野菜。こうしたものを主とした、伝統的な和食を毎日食べるべきでしょう。

動脈硬化の予防に効果的な食品成分といえば、EPA(エイコサペンタエン酸) 魚の油の脂肪酸。そのEPAをしのぐ新型の脂肪酸が新たに発見され、注目を集めています。それは、DPA(ドコサペンタエン酸)と呼ばれる魚油の一種です。
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